6.あるガーディアンの視点/オルタナティブの卵
ぱしぱしと叩かれて、私の意識は浮上した。
「ここにこうして……」
私の体は相当乱暴に扱ったところで壊れるものではない。だが小さいとはいえ掌で叩くのはやめてほしいと少しだけ思った。起こすのならば叩くのではなく、ちゃんと起動の手順に沿ってほしいと思ったところで、ぐいっと胴体をこじ開けられた感覚があった。
……私の体は胴体が開くように設計されていただろうか。
覚えはないが、作った女史のことを考えるとやりかねないと思った。あるいはあの博士ならば私が寝ている間に改造したとて不思議はない。
まぁよい。起こされたということはつまり、また私が入用になったということだろう。ならば起きねばならない。
勇者の不足を補うのが私の仕事なのだから。
「ふふっ、できた!」
また可愛らしい声が聞こえた。今度もまた、随分と小さな御方のようだ。
こじ開けられた胴体に、何かパーツがはめ込まれる。最後の時、おそらくあの時代のゼルダ姫様が持ち上げたパーツだろう。
それは的確な位置にはまったようだ。ガシャンと胴体が閉められる。その言葉通り、私の視野が回復する。
しかし私の目に映ったのは、見覚えのある腕ではなかった。
――なんだこれは?
アームのような腕、いやむしろこれは足か? それが三本ついているのが確認できる。手の先も爪のような形状をしていて、これでは剣を持つのは難しそうだ。目も二つない、単眼だ。
「御母様! 見てください!」
目の前には笑顔の幼い姫君がいた。
姫君の翡翠色の瞳に映った私は、白い卵型をしたガーディアンの姿をしていた。
了