ifゼルダ言い訳+α - 1/8

『あぁ………いつか、王妃死去の段階で城の外に預けられたゼルダ様のif話書きてぇ……………(絶対長くなるし仕込み多いから恥ずか死ぬ)』

 

 こう、Twitterで呟いたのが運の尽きでした。

 書けば書くほど飴と鞭をぺちぺちと頂き、ドMは歓喜のあまり気が付けば4か月半にわたって連載する羽目になったのです。

 

 『流水の兄騎士と落花の妹姫』を手に取っていただきありがとうございます。無駄に長いこの話を書いてしまった、あぱぱという者です。

 こんな言い訳コーナーにまで目を通しに来てくれる方々の手前、日ごろのおふざけは封印してちゃんといい訳しないとな~と、ふんどしのヒモを締め上げて正座しています。

 

 本当に最初は衝動的に呟いただけで、どちらかというと幼いリンゼルがきゃわきゃわするのが書きたいだけでした。

 姫様は6歳のころから市井でのびのびと暮らしているので心の呵責なく力にも目覚めるし、リンクさんの方はコログたちと協力して姫様を取り返そうとする陛下とやり合う、そんな気楽な話にしたいなーって。

 もう一つモデル?というか、オマージュしたのは私が尊敬する上橋菜穂子先生の『精霊の守り人』です。実は上記ツイート以前に「ハイラル王家のごたごたは上橋菜穂子先生の作品読んでるとさもありなん」とあぱぱ本人叫んでおりまして、王家のしがらみから解放された姫様が見たかった。(養父の亡くなり方とかは完全にオマージュです)

 

 が、しかし。

 書き上げた今だからこそ、当時の気楽に書き始めた自分の肩を叩いて言いたい。「自分、シリアス物書きだったよな?」と。

 なんというクッソ重たい話を書いたのかと、我が目を疑う散々たる事態となりました。

 

 

 

※以前、連載中に書いた『if ゼルダを関する言い訳的なもの』と被る内容なので、読んだことある方はご容赦ください

 

 そもそも、物語を作るうえで、私はどちらかというと玉突き式に必要なシーンを生産していくタイプの物書きです。

 例えば一番のギミックだったパパラルと影武者の入れ替わりについては以下の通り。

最初にゼルダ姫だけ城から逃げるなら、相応の理由が必要だなぁ

ハイラル城内に敵方が紛れ込んでいるけど分からないという設定が必要だ

でも王妃様だけ知っていて陛下だけ知らないってのは辻褄が合わない……

陛下がそもそも本人ではなく影武者で、知らせる必要がないってことにするか

結局、パパラルが影武者と入れ替わり、当の影武者が厄災に乗っ取られていたのでゼルダを逃がさなければならないという設定ができた

 こんな感じです。

 

 これと同様に、キャラの反応や行動についても同様に「ゼルダなら、この時どう考えてどう反応するかなぁ?」と玉突き式に話を作っていきます。が、その『反応を起こす大元』というのは、そのキャラの信念であったり過去の経験などがベースと考えています。

 例えばゼルダなら、「姫巫女として力を得たいの上手くいかない」というベースががあるので、何か行動をとらせる場合にはその気持ちを起点に「ゼルダならどう考えるかな?」と思考実験を重ねていくイメージです。

 

 ところが今回の場合には、リンゼルの大前提である『ゼルダが10年間修業しているのに力に目覚めない』『幼いころから天才と呼ばれて退魔の剣を抜いて姫様の騎士になったリンク』というところから崩しています

 

 つまり『ブレリンゼルかくあるべし』という公式の前提が育ち切る前の段階から、妄想思考実験を行ってストーリーを組み立てているので

 

「公式供給からのリンゼル像」

 ↓ そこから想像する

「幼少期のリンゼル像」

 ↓ さらに想像

「公式とは異なる幼少期を過ごしたリンゼル像」

 

 という段階を経ての思考実験の結果を文字にアウトプットしているので、相当な量のズレが生じていくことになります。

 

 そのため、書いていくともう特にリンクさんの性格が違うこと違うこと。お前は誰だと言いたくなるぐらい、解釈違いどころではない別人になってしまいました。

 例えばブレワイリンクと言えば、きっとお尻好きを想定していらっしゃる方多いかもしれませんが(どこ情報だ)、兄リンクさんはおそらくおっぱい派です。なぜなら6歳のころから平民として生きていくことになったゼルダが、自衛のために弓を習い始めたので胸筋が発達してブレワイ軸の姫様よりもおっぱいが大きくなるんですね。だから必然的に兄リンクさんは想定おっぱい派です。

 何なら傭兵時代に強面のオッサンたちに娼館に連れていかれていそう(明言は避けましたが非童貞っぽい気がする)。でも個人的にはそんなリンクさんは嫌だ!!!!解釈違い過ぎる!!!!!て心が泣きそうになりながら、でも最低限おっぱい好きはマストだなぁと真面目な顔で、風呂覗きシーンで視線の先を書いていました。そういう物書きです、スイマセン。

 

 というのは一例ですが、とにかく幼少期つまり騎士になる前のリンクさんに姫様を会わせると、『模範たれ』が発動しない彼がどんどん『ゼルダ一筋、他どうでもよい』となっていく傾向が強く、ほとほと困り果てました。ほんと、模範がないとゼルダ大好きの少年に育っていく……なんでや。

 そのためもはや「これは二次創作ではないのでは?」と思うところもあったのですが、プライベッターでの連載を少なからぬ人に見ていただいていたこともあり、せめて『ブレスオブザワイルド』『ゼルダの伝説』『二次創作』などのタグは外し、『リンゼル』タグだけにしてひっそりとアップさせてもらおうと思った次第です。

 その点についてはご了承していただけると幸いです。

 

 これは決してブレワイの二次創作と呼べるような話ではありませんでしたが、リンゼルにしたいとは頑張りました。もちろんご存じのブレリンゼル像とはかけ離れてしまったと思いますが、リンゼルだったなぁと思っていただければ幸いです。

 

 

 以下加筆修正点に関してのいい訳と、トワプリ・時オカ解釈挿入についての言い訳をさせてください。

 

【加筆修正点】

  • 話の開始の時点で、すでにローム王陛下が事件に巻き込まれていることにする

 プロットを立てる前にプロローグに当たる部分を書いてしまっていたので、あとから「物語の冒頭に伏線入れておけばよかったあああああ」と叫びました。見切り発車駄目絶対。

 

  • ゾーラの里で遊んでいるのはセラの滝

 ゾーラの里で遊ぶ際には最初は里の下部を想定して書いていたのですが、その後2人で旅をする初っ端、フィローネ樹海でのウルボザの検問で別人の名前を名乗らなきゃいけないじゃん!ってなりまして。「セラ」の名前が出てきやすくする伏線として先にセラの滝で遊んでいただきました。

 

  • お風呂覗きの時に見えるインパのほくろは痣に変更する

 本当に、なぜほくろにしたのか、あの頃の自分を小一時間問い詰めたい。

 インパと言えば、孫娘のパーヤには左のお尻にパパイヤの種の形をした痣(それってどんな形よインパ)があるという公式設定があるじゃないですか!! なのにどうして活用しなかったの!!!

 ということで、修正後は右の脇に痣がある表現に差し替えています。

 

  • 養父がゼルダには人を殺してはならないと言い含める回想シーンの追加

 ゲルド砂漠で一人になったところをスッパ(と思しき人物)に襲われるシーンで、どうしても弓慣れているのに反撃がうまくできないゼルダという像を作り上げるために必要な設定でした。が、上手く事前に仕込めていなかった。人物像の掘り下げが甘かった。

 

  • 本物のローム王陛下の顔には大きな傷跡が残っている

 これは、リアルタイムで読んでくださっていた方から頂いた感想で「クロチェリー平原でリンクを助けた陛下が誰だか分からなかった」というのが複数あったんです。

 これは私の方の力不足、書き分けがちゃんとできていなかったということで今回最大の反省点です。そのため、時の神殿で15歳の従卒の時のリンクにリンゴをくれた本物のハイラル王には顔に大きな傷跡があるという表現を追加することにしました。

 誤読させてしまった方々、大変申し訳なかったです。

 

  • ゼルダの祈りに対する感情から『母の敵討ち』という感情を削除する

 実は『リアルタイムに連載していく』というのが生まれて初めての経験でした。そこで問題になったのが、私が物語を書く上で『感情の収支』と(勝手に)呼んでいることがちゃんとできるかどうかでした。

 感情の収支と呼んでいるのは、簡単に言えばキャラの成長を表現するポイントみたいなものです。例えるなら『強敵に出会って一回目は怖くて逃げてしまったけれど、逃げた先で別の経験をして、2回目は逃げずに立ち向かい勝つ』という感情の波をちゃんとかき分けられるか?という技術的な問題です。

 この感情の収支がおよそ2~3万字ぐらいまでならば問題なく書けるのですが、さすがに5万字こえてくる物語だと全部書き上げないとちゃんと収支を合わせられないため、私は今までリアルタイムに連載していませんでした。でも前述通り始めてしまったので、やらなければならない。

 それを踏まえ、「平民になったゼルダが、ずっと姫君として成長したゼルダと違う感情を持つならそれはどんな種類だろうか?」となったとき、『あからさまに人を恨む』という気持ちを入れ込んでみたのが『母の敵討ちをしたい』という表現でした。

 これなら後々、なぜ封印の力に目覚めないのかという段階になった時に、人を恨むというネガティブな心情が働いているからだという理由も果たしてくれそう~と。

 思ったのですが。

 駄目だった!

 ぜんっぜん役に立たないギミックとなり、敢え無く削除と相成りました。

 リアルタイムに読んでいた方には、ゼルダの感情の種類としては相当異質だったんじゃないのかなぁと思います。が、実はそういう背景があったんだと、これが最大のいい訳だったりします。

 

  • 青年期のリンクの心情が一部ずれが生じていたのを修正

 これは完全に私の勘違いで書かれたミス文章でした。Pixiv版8章朴念仁の沈黙/プライベッター版15の最後で、宮廷詩人と姫付きの騎士に任じられたばかりのリンクの掛け合いで、リンクさんが自分の気持ちについてプライベッター版では自覚無しで書いていました。

 でも彼、どう考えても15の頃から自意識過剰ボーイなんです。自分の気持ちに気が付いていないわけがない。むしろリンクが無自覚なのは、ゼルダが振り向いてくれない理由が単なるエゴだと気が付いていない点。

 ということで、この点に関しては私の完全な読み間違いだったので修正しました。スイマセン。

 

  • エポナを呼ぶシーンのセリフ

 すいません、実は時オカ未履修なんです。なのになぜエポナを出したか。

 だってトワプリもエポナじゃないっすか(血涙)

 というのはさておき、エポナが牝馬か牡馬か調べていた(なぜ調べていたかというと、姫様の葦毛の馬との間に仔馬が生まれてリンゼルの息子の相棒になって欲しいから雌雄が気になった)のですが、エポナの歌、そうだよエポナの歌じゃん……ってなりまして。

 なので、エポナの歌の公式歌詞から一節お借りして、最後にエポナを呼ぶ際のセリフにしています。あの歌、いいよね。

 

……と、修正したりしなかったり、結局通算11回、Twitterの方で伏線入れ失敗で叫びましたことを報告させていただきます。

 

 

※以下、トワプリに関するネタバレ要素があるので、ネタバレ嫌な方は飛ばしてください。

 

【トワプリ解釈を入れた背景】

 前述どおり、時オカに関しては未履修ながらエポナ、あるいは「ガノンドロフ」という人物の名前で呼ぶことに対しての素地として入れ込みました。

 一方でトワプリからの解釈をなぜ入れたのかというと、理由は大さっぱに2つ。

 一つはウツシエの記憶の中で太古の儀式を模してリンクに祝福を授けるゼルダの文言です。文言の中で『空を舞い 時を廻り 黄昏に染まろうとも』『海を越え 神の作りし黄金を求めんとき』が出てきていることです。

 もし時の勇者敗北ルートだったら、『時を廻り』の一節は後世に残りづらくないか?と勝手に思っていました。そのためブレワイでは明言されていないものの、勝利ルートのどちらかの末ではないのかしらと。勝利(子供回帰)のトワプリと勝利(回帰せず)の風タク双方から文言が来ているので、どこかで時系列が合流したんだろうなぁー(続編の一万年前で明らかになるのかしら~?)とぼんやり考えていました。

 もう一つはブレワイ最終戦の魔獣ガノンで、光の弓矢を側面3発ずつ当てたあと、腹に一発あてなければならないのが、どうしてもトワプリの魔獣ガノン戦(ミドナで引っ張り倒して六賢者が付けた腹の傷に噛みつく)と被りました。

 そのため今回、(勝手に)人格を取り戻していただいた厄災ガノンには、明確な表現は避けましたがトワプリで使っていた六賢者の剣で戦ってもらいました。

 

 

 とまぁ、色々と言い訳を連ねてきましたが、何よりリアルタイムで読んでいた方々にはプライベッター版ラストの20話がかなり衝撃的だったようでスイマセンでした。

 二次創作はネガティブな要素がある場合には、前もって知らせておくのがマナーというのをつい半年ほど前に二次創作始めた際にようやく知りました(10年以上一次創作しかしてこなかったので全く知りませんでした)。

 気を付けていたつもりではあったのですが、リアルタイムで書いてラストの方ではかなり疲労していたこともあり、すっかり忘れて一切の告知なく気持ちいぐらいドカンと殺しました。

 ハピエンだと信じてやまなかった方々には大変申し訳ありませんでした。ただエピローグでちゃんと残りの伏線回収したと思うので、どうか平にご容赦を(土下座)。

 

 元々のプロットでは、兄リンクさん大怪我はするけど無事で、最後に「俺はもう必要なくなったな…もう本当のお父さんもいるし」って去ろうとするところへ、妹ゼルダが「兄じゃなく(夫として)傍に居てください!」っていう100年前ハッピーリンゼルセットのはずでした。

 ところが、シリアス物書きの血が「このオチどこがおもしろいん?」と。まさしくゴーストが囁いてしまったんです。

 

 そこで「怪我をして回生の祠に運び込まれるが、ハイラル王が事前に祠を調べていたことで10年ほどで目覚めて、ゼルダと年齢が逆転している(兄妹である意味がここで生きてくる)」状態で同様の90年前ハッピーリンゼルセットにしようとしたんですね。その伏線の残り香がアンチエイジングに対するゼルダの「若くなるより年上になりたい」でした。

 

 ところが。

 私のとてもとても尊敬している某作家さんが、ものすごい心を射貫かれるオネショタエンドを書かれたのを見て、「あああああ!!!神か!この人は神か!!!!なんつーエンドだちくしょうやられた!!!」と天を仰ぎました。

 10年ばっかし回生の祠にぶち込んで年齢逆転させるのは甘い。もっと彼を絶望に突き落としてから最後に救いの手を差し伸べたい(ゲス顔)。

 そんな気持ちに拍車がかかった末、結局史実通り全治100年(ギラヒム様ですか)、ただし記憶を失ったのはゼルダの方でした!なハッピーハテノリンゼルセットというオチになったというわけです。

 

 おかげさまで一番の課題であった『平民になって暮らした経験のあるゼルダの感情の収支』がおりよく収まったかなと自分では考えています。結局、市井で暮らしたゼルダと姫君で在り続けた本当のゼルダとの一番の違いは何なのか?と考えると、民への感情の爆発力が違う気がしていました。

 それに何度プロットを書き直してもリンクという青年が、あれほどゼルダ大事ハイラルはどうでもいいと言うくせに、ハイラル王国という枠組みがある限り真の意味で自由にはなれなかったことも大きな要因でした。原作ブレワイでも国が滅びて記憶を失って、ようやく自分にまっすぐ生きられるようになったように、育ちが違っても彼はなかなかに不器用でした。

 

 ということで、キャラの勝手な解釈のために、王国を滅ぼした悪鬼あぱぱの書いた文字数は合計27.3万字でした。こんなに長大な話を全て読んで頂けて、書き手としては本当に嬉しいです。ありがとうございました。

 

 

 

 で。

 こんな膨大に読んでくださった方ならば、あと2.7万字ぐらい、どうってことないですよね……? 十分の一程度ですし。

 

 もしよろしければ、その後の彼がどうしたのかだけ、ちぃとお付き合いくだされば幸いです(古いオタクなので、こういう場所にひっそりと作品を隠しておくのが好きなだけです)。