厄災は封印されました - 2/2

 

 あれから随分と歳月が流れた。

 カーテンの隙間から差し込む光に、白銀の髪が風のように輝いているのを指ですくう。いくつになっても可憐な人だと寝顔を覗き込んだ。

 私の隣で眠るその人は、今朝はとても穏やかな寝顔をしていた。たぶん悪い夢は見ていない。ただし昨夜は隣で寝ることを許した私のことを、目覚めてどう思うかは別として。

 もう声を掛けようか、それとももう少しこのまま見ていようか迷っていると瞼がピクリと動いた。うっすらと開いた翡翠色の瞳が、真新しい世界を映す。今日の彼女はどんな人生を送るのだろう。現実を受け入れられる日も、受け入れられない日も、それでも私は彼女に朝を連れて来る。

「おはようございます。厄災は封印されました」

 悪夢がすっかり消え去る静かな夜が来る日まで、ただ穏やかな真昼が続くことを願った。

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