表裏なす赤の秘密 - 14/24

 

「なっなっなっなんであなっ………むぐぅっ!」

 

 コーガ様を指さしながら叫びかけたインパの口を、ゼルダが慌てて抑える。おかげでインパは声こそ発さなかったが、三人は零れんばかりに目を剥いた。リンクも我知らず、剣の柄に手が伸びる。

 コーガ様と言えば、厄災との戦いにおいて途中までは完全に敵対していたイーガ団の総長だ。ゼルダが命を狙われたことも一度や二度ではない。

 紆余曲折あってイーガ団とは共闘するに至ったが、そうたやすく王家への反感が消え去るわけでもない。厄災を打倒したあと彼らは人知れず姿を消し、その後は敵対することもなく、かといって解散したという情報もなかった。

 

「本物のホルトウ侍従長はどうなされたのですか?」

 

 ロームが黙っているところを見るに、不法侵入ではなく合意の上で変装したいたようだ。だがさすがに看過できず、リンクの声色も鋭くなる。

 しかしコーガ様は気にも留めずヘラリとして、机の端に腰かけながら肩をすくめた。

 

「まだぎっくり腰で自宅療養中だが安心しろ、うちの若けぇモンがちゃーんと面倒見てるからよ。それよりも犯人の情報を持ってきた俺様に、その殺気はねーんじゃねぇのぉ?」

「犯人の、情報?」

「リンク、落ち着け。今回の事件、元はと言えば儂の悪戯が原因じゃが、どうやら真犯人は相当厄介な相手のようじゃ」

 

 ロームに言われれば、リンクは柄から手を離す。しかし眉間にきつくしわを寄せたまま、いつでも斬り込めるように間合いを詰めた。

 コーガ様だってそのことに気づかないわけがない。だがフンと鼻を鳴らし、余裕たっぷりに腕組みをしてふんぞり返って見せた。

 

「恐らくだが例のパリュールの箱からネックレスだけを盗んだのは、最近イーガ団から離反した奴だ。名前はシチホ、……と言っても、それが本当の名前かどうかは分からねぇけどな」

 

 当然その名に聞き覚えはない。リンクはゼルダの方を伺ったが、彼女の真剣な横顔からは特別何も読み取れなかった。

 一方のインパは、別の意味で大仰に首をかしげる。

 

「イーガ団から離反って、そしたらシーカー族に戻ったってことですか? そんな話聞いたことありませんけど?」

 

 イーガ団はもともとシーカー族の武闘派が反王家を掲げて分離した一派だ。そのイーガ団から抜けたのなら、シーカー族へ戻ってくると考えたのだろう。インパはシーカー族の族長の家系に連なる人なので、一般的なシーカー族よりも一族内の動きはよく把握している。

 ところがコーガ様は自慢のちょんまげを真っ赤にしてぷりぷり怒った。

 

「あのなぁ、いまのイーガ団は甘くて美味しいバナナ栽培してんだよ! 最近城下でも売ってんのに、知らねぇのかぁ? うちのバナナはめっちゃくちゃ美味いんだぞ!」

「えぇっ、イーガ団がついにただのバナナ売りに!? 反王家はどうしたんです?」

「今のゼルダ姫の代か、その子供の代ぐらいまでは反王家はお休みってことで、しょうがねぇからバナナ栽培に専念してるんだ! そしたらシチホは俺様のやり方が生ぬるいって出て行っちまってよぉ……。それで俺様直々に探しに来たわけだ!」

「ところが事件が起こってしまった、と?」

 

 まっそういうこと~とコーガ様はのんきそうに答えたが、ちょんまげはイライラと赤く点滅していた。イーガ団の方でもだいぶ問題視されているのかもしれない。

 すると、ここまで黙って話を聞いてきたゼルダが、あの、とおずおず手を挙げた。

 

「あの、一つ分からないことがあるのですが、どうしてそのシチホという者がネックレスを盗んだ犯人だと断定できるんですか?」

「それについては儂から話そう」

「御父様?」

 

 じっと岩のように動かなかったロームが重苦しい口を開く。ため息とも唸り声ともつかぬ長い痛嘆ののち、鋭い視線がいまだコーガ様との間合いを図っているリンクへとむけられた。

 

「リンク、あのパリュールの由来については聞いたか?」

「はい、ティントから大まかには。ネックレスに使われた一番大きな宝石が呪われていて、ウルボザの元に持ち込まれた際に亡くなった王妃様が解呪されたと聞きました」

「うむ、……表向きはそうなっておるが、実はその話がそもそも嘘なのだ」

「……え?」

 

 驚きに、青い目が丸くなる。その瞬間を見計らったかのようにコーガ様は少しだけ距離を置いた。

 そのリンクの驚いた顔に、インパがクスリと笑う。

 

「まさかリンク、呪いの宝石なんて本当に信じてたんですか?」

「え、いや、……」

 

 事実、ユースラに見せてもらった宝物庫には、良い気配も悪い気配もなんでもあった。幼いころから人ならざる者と接してきたリンクは、だからこそ『呪いの宝石』と言われても特に不思議とは思わなかったのだ。悪いものが憑りついた宝石が、人を不幸にしてもおかしくはないだろう、と。

 しかし元来は視えない質のインパにしてみれば、そもそも『呪いの宝石』など眉唾物だったのだろう。すっかり信じていたリンクは、恥ずかしさで頬が熱くなるのを感じながらムッと黙って顎を引いた。

 オッホンとロームが咳ばらいをする。

 

「確かにハイラルには数多の神霊がいると言われておるな。退魔の剣の声を聴くおぬしであれば、宝石に呪いがあっても不思議とは思うまい。じゃがあの宝石に憑いていたのはそういった形無きものではなく、強欲な王家の人間から命を受けた哀れなシーカー族じゃった」

「シーカー族……の、霊ではなく、生身の?」

「左様。稀なる美しい宝石が王家以外の手にあることを良しとしなかった王家の誰かが、とあるシーカー族の隠密に『宝石の持ち主に不幸を与えよ』と命じたのだ」

 

 発端は単なる嫉妬だったのか。それとも戯れだったのか。今となっては誰にも分からない。

 唯一リンクが分かったのは、命じられたシーカー族が命令を忠実に実行しただろうということだけだ。

 インパやカスイを見ていれば分かるが、シーカー族というのは王家の者をひどく大切にしている。それはもう、一つ間違えば崇拝の見まごうばかりのこともあり、つまり王家の者を害する相手には容赦がない。

 だからもしその崇拝、あるいは情ともいうべきものが裏返ったらどうなるのか。

 それはイーガ団の王家への恨みを見れば、火を見るよりも明らかだ。

 

「宝石の持ち主に度重なる不幸が続けば誰もその宝石に寄り付かなくなり、いずれ解呪のため王家に転がり込むと踏んだのであろう。実際そのように事が運んだのがおよそ30年前、儂もよく覚えておる。あのウルボザがいかめしい顔で王妃のもとにあの宝石を持ってきた……、『これを呪いの宝石に仕立てるように命じたのは誰なんだい』とな」

 

 呪いの正体がシーカー族であることに驚いているリンクの横で、ゼルダもまた困惑を隠しきれずにいた。30年前ということは、彼女が生まれる10年ほど前のことだ。だからゼルダでも、呪いの宝石の真実を今回初めて聞いたのかもしれない。

 ロームの拳がぐっと握り込まれる。それはかすかに怒りの気配を帯びていた。

 

「無論、シーカー族に不実な命を与えた王家の者は儂でも王妃でも、ましてやゼルダでもない。それは神に誓おう。その者の正体は、儂にはおよそ見当はつくが確証はなく、もちろんとうの昔に死んでおる。じゃがハイリア人とシーカー族の寿命の差を鑑みれば、シーカー族の方は当人、あるいは縁者が生きていてもおかしくはない」

「では呪いの宝石を作るために利用されたシーカー族が、今回の犯人のシチホですか?」

「いんや、当人じゃあねぇ。当人はどうやら病死したらしく、シチホはその息子か娘だ」

 

 ロームの話を受けて再び口を開いたコーガ様だったが、その言葉にインパが指をさして大声を上げた。

 

「ちょっと待ってください、娘と息子の差は大きいですよ! どっちなんですか!」

「シチホは変装の天才だ。名前はおろか、本当の顔も年齢も、性別も分からねぇ」

「はぁ!?」

 

 インパが声を裏返らせる傍らで、通りでコーガ様本人が出張ってきたのだ、とリンクは静かに全く分からない犯人像に考えを巡らせた。

 ただの離反者ならば、幹部が数人いれば事足りるはず。そこまでイーガ団も人材に困っているわけではないだろう。事実、バナナ栽培をする人員はいるのだから。

 総長本人が対応に当たるほどの相手、つまり犯人のシチホとは相当手ごわい相手ということだ。

 

「性別も知らないんですか!? イーガ団総長のくせに!?」

「だーって毎回違う変装で本当の顔すら知らないんだもーん! インパだってどうせシーカー族全員の顔と名前なんかわかっちゃいねぇだろ? 隠密なんてそんなもんだ」

「んぐっ……それはそうですけど! でも流石にそっちは監督不行き届きじゃありません!?」

 

 イーガ団総長と次期シーカー族長の間でバチバチと火花が散る。ただ勝負はつかず、互いに「ふんっ」と腕組みをしてそっぽを向いて終わった。

 コーガ様は丸っこい背中をさらに丸め、芝居がかったしぐさで肩をすくめる。

 

「とまぁ、こういうわけでシチホは、王家への復讐のためにイーガ団に身を投じたってぇワケだ。あいつ、ことあるごとに『王家は父を使い捨てた』って恨み言吐いてたからなァ~」

「つまり犯行の目的は王家への復讐?」

「さっすが、封印の姫巫女! 話の呑み込みが早くて助かる! ボレッセン子爵への返済に困っているゼルダ姫が担保まで盗まれたら、あとはもう強欲な貴族たちの介入を許すしかねぇ。そうやってアンタが苦しむ顔を、アイツはどこかで悠々と眺めてるはずだぜぇ……?」

 

 どこかで。

 ゼルダが今こうして苦慮に唇を噛む姿を高笑いして眺めている。

 それは王家へ介入するための男妾の座を欲する者よりも輪をかけて厄介で、そしてひどく底意地が悪い。ロームの私室の隅から隅まで視線を這わせたが、当然この場には犯人の視線らしきものはなかった。

 

「ってなわけで!」

 

 ぴっと右手を挙げてから、コーガ様はそこかしこに散らばった変装道具を拾い集め始めた。

 

「悪さをする前に俺様はシチホを捕らえようと、んでそっちは侍従長がぎっくり腰で人手が足りねぇってんで、利害が合致したから俺様が侍従長をやってやったわけよ!」

「でも犯人はもうやらかしてるじゃないですか!」

「だから正体を明かして情報をくれてやったんだろぉ、後はそっちがせいぜい頑張ってくれ!」

「威張ることじゃないですよね!?」

 

 服を着て詰め物を入れ、髪を被り、皮を被り、あれよあれよという間に見慣れた侍従長ホルトウの姿に戻っていく。そのふざけた素顔がちらりとでも見えないかと、リンクはじっと変装する姿を眺めていたが、残念ながらコーガ様は素顔をさらすことなくホルトウの姿に戻ってしまった。抜けていそうに見えて、さすが総長抜け目はない。

 

「では皆様、どうぞお気を付けくださいませ」

 

 まるで別人のように優雅なお辞儀のホルトウに見送られ、三人は部屋から出た。誰からともなく重苦しいため息が漏れる。

 コーガ様の話が事実であれば、犯人の元イーガ団員シチホは変装の天才。いまもこの城にいる誰かに変装して、ゼルダが事件に苦しむ姿を楽しく見物している。

 ここまでは『宝石を盗んでゼルダを困らせて王家に取り入る』という動機の側面から犯人を捜してきた。しかし犯人が変装して潜んでいるのなら、外見と中身の人間が異なるのだから、動機はもはや判断基準にならない。

 むしろ関係する人全てが容疑者である可能性が――、と気づいた瞬間、リンクは隣に立っていたインパの頬っぺたをつねっていた。

 

「ぃぃいいだだだだだだ! リンクっ、にゃにをっ!?」

「変装だったら困る」

「しっ、失礼なー! そういうリンクはどうなんですか!」

「本物だ」

 

 延ばされるインパの手をゆうゆうと避け、リンクは真顔で背負ったマスターソードの柄を撫でた。それを見て、インパは悔しそうに手を引っ込める。

 リンクにはマスターソードが、ゼルダには封印の力という他人には真似のできないものがそれぞれある。二人はいわばそれが身分証代わり、どう足掻いても変装などできない。

 そういったものが無いインパに向かって、変装ではないことをもっとちゃんと調べさせろと、リンクはさらに手を伸ばそうとした。方やインパはむきになって、変装云々を抜きにリンクの顔をつねろうと腕を伸ばす。

 ところが二人の間にゼルダが分け入った。

 

「二人とも、私の頬でよければいくらでもつねってよいですよ」

「そ、それはぁ~」

「……さすがに、いたしかねます」

「では二人とも仲直りしてください。今は仲間割れをしている場合ではありません」

 

 ゼルダは少し肩を怒らせて、二人の前で大きくふんっとため息をついて見せた。

 

「いいですか。ここまで私たちは動機の有無で犯人を捜してきたわけですけど、コーガ様の情報が確かなら誰が犯人でも可笑しくないということです」

「姫様ぁ、もうこれ、手詰まりじゃありません……?」

「ええ、一見すれば。でも逆に、私の覚えた違和感の正体は明らかになりました。図書室に出入りした人たちが王家に取り入る必要のない人物ばかりだったのは、つまりその観点からの犯行ではなかったから。むしろ犯人は、私に近しい立場で優しそうな顔をして、裏で高笑いしているのでしょう」

 

 ボレッセン、カスイ、リード、ヤツリ、ティント、チガヤ、ユースラ、この七人のなかの誰かに犯人は変装して、ゼルダが苦悩する姿を眺めている。

 では一人一人頬をつねって回ろうかとも思ったが、天才の変装がその程度で外れるとも思えない。理由のない尋問などすれば、さすがに問題にもなる。

 インパではないが、これはもう手詰まりではないかリンクも唇を噛む。何を足掛かりに犯人を捜せばよいのか分からない。だがゼルダは諦めるどころかめらめらと瞳に闘志を燃やし、きつく口を引き結んで見えぬ犯人を睨み据えていた。

 

「ともかく明日、聞き取りをしましょう。地道ですがそれしかありません。幸いにも私には協力的でなければ疑われる立場の人が多い、話ぐらいは応じてくれるはずです」

「ではこっちは隠密を動かして、イーガ団の何某が入り込んだという方を探ってみます。なぁに、蛇の道は蛇と言いますしね!」

 

 くれぐれも気を付けるようにとお互いに確認をして、その夜は別れた。

 重たい体を引きずるようにして、リンクは一人きりになれる庭園に転がり込む。敵と分かればいくらでも斬れるのに、そうと分からぬ犯人に四六時中気を張っているのはさすがの彼でも疲労感にさいなまれていた。

 

「ともかく、変装を見破らなければ……」

 

 椅子の背にもたれて、東屋の天井を見上げた。

 変装を見破って犯人を見つけなければならないが、それは信頼していた相手の顔が剥げて無くなるところも同時に見なければならないということだ。言いようのない辛さがある。だが犯人の変装を見破らなければ、ゼルダが苦しみ続ける。そんな答えのないことを止めどなく考えてしまう。

 どうやって変装を見破ればいいのか、何かコツなどないものか、コーガ様に聞いておけばよかった、と彼は軽く下唇を突き出した。犯人の情報提供をするぐらいなら、それぐらい協力してくれても罰は当たるまい。もし機会があったらインパにも聞いてみよう、と思っていた時、近くで草を踏む音が聞こえた。ハッと姿勢を正す。

 普段は人気のない庭園に、人の気配が忽然と現れた。

 

「……シーク?」

「ご無沙汰しております」

 

 いつぞやゼルダからの言葉を伝えに来てくれた金髪のシーカー族が、気づけば少し離れた木の根のあたりに立っていた。やはりシーカー族らしいおけさ笠と前合わせの服装で、足音を立ててのはわざとだろう。

 真っ赤な瞳がリンクを貫き、ややあってからぺこりと頭を下げる。

 

「どうかシチホを見つけたとしても、斬らないでいただけませんか」

 

 意外なところからシチホの名が出てきたものだと、リンクは目を見開いた。

 事ここに至るまで、存在すら知らされていなかった犯人の名前を、どうしてシークが知っているのか。これについては少々不思議ではある。

 ただ、斬るか斬らないか、これについてリンクは即答を避けた。最優先は盗まれたネックレスを見つけることであって、犯人を捕まえることではない。それを念頭に考えると、犯人の生死はこの際重要ではなかった。

 それに生け捕りとはとてつもなく難しい。相当な力量さがなければ傷つけてしまうし、隠密ならば自決用の薬を持っていてもおかしくはない。そういったことを隠密であるシークが理解していないとは思えないのだが、リンクはシークがひそかに動いている理由を思い出してわずかに目を見開いた。

 

「シークが探しているのも、もしかしてシチホですか」

 

 返事はなかった。だがその無言が何よりもの肯定だった。

 シークは以前この庭園に現れた際、問われてこう答えている。

 

『私は、ある人をそそのかした者を探しています。』

 

 ある人が誰なのかは分からないが、そそのかした者がシチホだったというわけだ。だとすると、シチホは相当前からハイラル城に入り込み、暗躍していたとも推測できる。

 人知れず誰かの顔を借り、そうと分からず人をたぶらかす。本当に難儀な相手だ。そんな者を身近に飼っていると思うだけで、リンクはぞっとした。

 

「努力はします。しかし、約束は難しい……」

「それでもかまいません、どうか。私はその者に問わねばならない。どうしてそそのかしたのか、その理由を知りたい」

 

 シークにはシークなりの深刻な理由があるとみた。それは闇夜に紛れ潜む隠密がわざわざ姿を現すほど大切なことらしい。

 ならばと、リンクは向き直り、また今にも影の中に姿をくらまそうとしていたシークに声をかけてつなぎとめる。

 

「一つ、あなたをシーカー族と見込んでお尋ねしますが、あなた方の変装を見破る方法はありますか? シチホは変装の天才だと聞きました」

「シーカー族が己の変装の見破り方を教えるとお思いか?」

 

 最後の方は声だけを残し、人一人分の気配が夜陰に消える。現れた時同様、シークはまた忽然とその気配を消した。残ったのは夜風にざわめく庭園だけ。通り抜ける風が、不気味に枝葉を揺らしていた。

 

「案外シーカー族同士でも変装を見破れないのかもなぁ……、お前は分かるか?」

 

 試しに剣の精霊に向かって声をかけてみた。マスターソードは退魔の剣とも呼ばれる。悪しき相手なら見破ってくれるのではないかと少々期待した。

 だが生憎と寝ているのか、剣の精霊は何も答えなかった。