ロベリーへの用事のついでにイチカラ村へと寄り道をした。オルディンの南採掘所で声を掛けたゴロン族のグレーダとププンダがちゃんと村にたどり着けたか、ゴロン族は妙なところでのんびり屋なのでちょっぴり心配だったのだ。
村に入るとツルハシの音が二つ聞こえてきたので、無事に到着したのだとすぐにわかった。グレーダはすでに仕事を始めていて、ププンダは掘り出した宝石を並べたお店を開いている。
ホッとしながら、その後の調子はどうだろうかとエノキダを探した。彼もまたグレーダと同じく意気揚々と作業をしていたが、作業着は以前にも増してぼろぼろ。毎日こうして岩と格闘していれば、確かにすぐに服も破れてしまうだろう。
「……なので、裁縫の上手なヤツを探してくれないか?」
「まだ『ダ』で終わる人?」
「社是に則りな。裁縫が上手と言えばゲルド族を当たれば居るかもしれないが」
そこまで言うなら自分で探しなよーと思わないでもなかったが、ハイラルのあちこちをうろうろしている俺だから出来るという自負もある。人探しの駄賃代わりにタダでベッドを借りた。
ゴロリと横になり綺麗な天井を眺めながら考える。ゲルド族か。ダで終わる人なんかいたっけ?
一晩考えた挙句、一人だけ該当しそうな人を思い出した。以前会ったのは確かカラカラバザール、ヴォーイ・ハントのためにゲルドの街から出てきたパウダさん。確かお裁縫も得意って言ったはず。でもいつまでカラカラバザールにいるかは聞かなかった。
「とりあえず、行ってみるか」
と言うことで次の行先はカラカラバザール。あまり寄り道をしていると、早くハイラル城へ姫様を助けに行けとインパに怒られるのだが、俺なりに色々と準備しているつもりだった。まだもう少し足りないものがあるから、それが集まって準備が整ったら行く。
「といって、問題はどっちから行くか、だよなぁ」
実はカラカラバザール自体には、祠が無いので直接シーカーストーンで飛べないのが地味に面倒くさい。結局その時はゲルドキャニオンの馬宿の方から入っていくことにした。
もしパウダさんがヴォーイ・ハントに行くのなら、ゲルドキャニオンを通ってハイラル平原の方へ来るはずだから、運よくすれ違えたらいいなと思って。
「で、どっちを着るかが毎度問題なわけですよね……」
イチカラ村を出て、周囲に魔物も人もあまり寄り付かない大妖精の泉の前で、熱砂の服と淑女の服とを取り出して見比べていた。どちらも買ったときから染色はしていない、そのままの装備。
グランドキャニオンの馬宿からカラカラバザールへ行くには、昼間なら耐暑装備は必要だ。でもゲルドキャニオンからカラカラバザールまでならそんなに気温は高くないから熱砂の服ほどの耐暑装備は必要ない。だからどっちに着替えようかなぁと腕組みをしていた。
すると後方でザバンと水音がする。嫌な予感に振り向くと、豊満なボディーが水しぶきを上げて登場しているところだった。
『そなた、筋骨隆々のまっちょではないのじゃから、是非にもそちらのふんわり可愛らしい服にするのじゃ』
やっぱり。大妖精のミジャーが浅葱色の淑女の服の方を指さしている。するとあたりの小さな妖精たちも息を合わせるようにして、淑女の服を持ち上げる。
「それって大妖精の趣味?」
『わらわは華奢な男子も守備範囲はもちろん、女装男子もやぶさかではないぞえ。ほれ、はよう着替えて見せよ!』
妖精たちも持ち上げた淑女の服をぐいぐいと押し付けてくるので、しょうがない今回の砂漠行きは淑女の服に決定だ。
着替えて見せたら大妖精は急に真面目な顔になり『そなた、なかなか筋が良いな? 一番上のテーラ姉上にも伝えておくので、またその服装で来るように』と意味深なことを言って退場ッしていった。
少し怖いなぁと思ってそそくさとゲルドキャニオンのケー・ノイの祠へ飛ぶ。
パウダさんらしき人とすれ違わないか、人の顔をそれぞれ見ながら谷あいを抜けて砂漠へ入る。砂漠に入ってからもあって無いような道から外れている人はいないかと、きょろきょろしていた。
だからこそと言うべきか、砂にまみれたボロ雑巾みたいな何かを見つけた。
普通に見過ごせばいいものを、気になって近寄ってしまったのがそいつとの出会いだった。
「オクタ? うわぁ、岩オクタじゃん」
砂漠の太陽でシワッシワになった岩オクタだった。オクタってこんなに小さくなるんだ?ってぐらい乾いて縮んでいるので、一瞬なんだか分からなかった。でも持ち上げてみたらちゃんと足も八本ついている。
「っていうか、なんで岩オクタが砂漠にいるの?」
何度も宝箱に引っかかったので身に染みているのだが、ゲルド砂漠に生息しているのは頭の上が宝箱に擬態している宝オクタ。体の色が明るい茶色なので砂に埋まると本当に見分けがつかなくなる。
ところが俺が拾い上げたしわしわのオクタは、乾いて模様が濃くなっていたが緑がかった灰色だった。目玉の色も真っ赤で、宝オクタの憎らしい緑色の目より随分と可愛く見える。
ふと上を見上げるとゲルド高地の絶壁があって、そういえば高地には生息していたなぁと思い出した。もしかして、このオクタはドジをやらかして崖を真っ逆さまに落ち、挙句登れずに干上がってしまったのかもしれない。魔物とはいえ、ちょっとかわいそう。でもありがたく素材を頂く所存。
と思ったのだが。
「いや、足にも風船にも目玉にもならないって、こいつ死んでないってこと?!」
魔物を倒すと素材が手に入る。これは当たり前のことだ。そうやってたくさんの魔物素材を手に入れてはへんちくりんな魔物ショップに売っていたので間違いない。
よく見れば、岩オクタはかすかに動いていて、掴み上げている俺の腕の方に向かって弱弱しい足を伸ばしてペタペタしているではないか。こんなの初めてだ。
ここまで弱らせる前にいつも魔物にはとどめを刺してしまうので、怪我や病気で弱っている魔物を見るのは初めてのことだった。
生きてる、弱ってるだけ、死んでないオクタ。そんなものを前にして健啖家としては当然。
「…………食べてみたい」
うんと頷くや、ともかく砂だらけだったので水を取り出した。
たぶんそのままカラカラバザールに持って行ったのでは、警備の人に魔物を持ち込むなと怒られてしまう。だから今のうちに洗って、食べられそうな足と頭の部分だけ切り取って食材として持っていく作戦。
「オクタ料理かぁー、どんなのにしよう」
わくわくしながら水をぶっかけた。
途端、弱っていた岩オクタが急にぷっくりと膨らむ。さっきまでしわしわだった体表面がプルンとして、カピカピだった目玉がつるんと丸くなり、真っ赤な目玉は俺を見つめる。
これはまさか、水を得た魚? タコ?
一拍おいて、自分が魔物の蘇生を手助けしてしまったことに気が付く。慌てて岩オクタを放り出し、背中のマスターソードに手を掛けた。石が飛んでくると思って盾にまで手を伸ばす。
ところが岩オクタは辺りを見回してからノソノソと砂の上を這うと、ヒタリと冷たい足を俺の足首にくっつけた。ぺたぺたぺた。
それなんというか、ご飯を分けてあげたハイリア犬が、濡れた鼻をピタッとくっつけて来るのにちょっと似ていた。
「おまえ、襲わないのか……?」
ぺたぺたと、答えのない感触ばかりが足にまとわりつく。
でも不思議と、吸盤が吸い付くことはあっても、跡が残るほど痛く絡みつくことはない。なんてまろやかソフトタッチ。
「魔物にも感謝の気持ちがあるのかなぁ」
試しに岩オクタを抱き上げたが、全く抵抗しなかった。ちょっとかわいいなぁとか思ってしまう。
いつもゲルド高地やオルディンで岩を吹いてくるやつよりもかなり小さくて、俺の腕の中にすっぽりと入る程度しかなかった。それに頭の上の石は一見すると丸く削られているように見えたが、たくさんの傷があって割れた末に小さくなっていた。
もしかしたらこの岩オクタは、あまりにもチビだから周りのオクタたちにいじめられてゲルド高地から砂漠に落っこちてしまったのかもしれない。実はすごくかわいそうな奴なのかも!
などと勝手な想像をして、結局のところ俺はその岩オクタを殺す気がなくなってしまった。食べるなんてもってのほか、むしろ可愛いく見えるぐらい。
「どうしよう、でもこんなところに置き去りにしたら、お前また干からびちゃうよなぁ……」
きゅうと小さく鳴いて、ルビーみたいなクリクリの瞳が俺を見上げる。これが決定打。
俺はこの子をゲルド高地まで送り届けることに決めた。
「でもごめん、この後はカラカラバザールに行かなきゃいけないんだ。見つからないように、どうすればいいかな……」
「そこの彼女~! 大丈夫ッスか~!」
「げっ」
大手を振って向こうからハイリア人の男がやってくるではないか。しかもどうやら完全に女だと誤解されてる。誤解される衣装を選んだのは大妖精だけど、さすがにこの状況はまずい。
「えーっえーっと。いいや、とりあえずパンツの中に入れ!」
声の調子から行って、どうやら女の子(と言うか俺)に鼻の下を伸ばした男が、砂地に足を取られながら走ってくる。それに背を向けて、淑女のパンツのウエストをガバっと広げると、チビの岩オクタをパンツの中に隠した。
実は淑女のパンツって、暑さ対策のためなのか緩く作られているので、足回りにはそれなりにゆとりがある。あまりにも小柄な岩オクタだったので入ると踏んでのことだ。
「大丈夫ッスか、彼女! 体調悪いんすか?」
「え、いや、大丈夫ですよ」
「こんなご時世、女の子の一人旅は危険ッス。俺がバザールまで送って行ってあげるッスよ!」
「あ、ありがとうございますー?」
何も答えていないのに、そいつはガラトンと名乗った。旅装をみてもいたって普通のハイリア人の行商人。本名を名乗るのもおかしかったので、リンリンって偽名使っておいた。ボテンサと同じで、ちゃんと勘違いし続けてくれるだろう。
別についてきてくれなくても大丈夫だったのに、むしろ行先が同じだということが問題だった。
「へぇ! そのゲルド族の人に会いに、リンリンさんもカラカラバザールに行くんッスか。奇遇ッスね~」
「そ、そうですね、奇遇ですね~」
「俺もいつかゲルド族の女の子とお知り合いになりたいッス。それでいつかハーレムに……」
あーコイツも、女の子目当てのゲルド観光か、とため息が出る。
ハイリア人の男って案外こういうの多いんだよな、だからヴォーイ・ハントなんてものが成立するのかもしれないが。でも同じハイリア人男子としては遺憾の意を表明したいので、ゲルド族の上腕二頭筋と前腕筋群に挟まれて昇天しろ~と心の中でちょびっと呪っておいた。
まぁカラカラバザールまでのちょっとの辛抱。もう見えているし大丈夫、と思った時だった。
淑女のパンツの中でチビオクタが位置を変える。
「ひぁっ……♡」
パンツに無造作に突っ込んだ時、目を回していたのかチビオクタはしばらくパンツの裾の方、右膝の上あたりでごろんごろんしていた。それがいまになって目を覚ましたのか、触手が動き始める。
「リンリンさん?」
「えっ……いやっ、なんでもないですよ!」
短いながらも柔軟な足が、俺の右の足にペタペタ触れる。人間が見知らぬものを見た時にまず指先で触れようとするのと同じで、オクタにとっては足で触ってそれが何なのか確かめようとするのだろう。
ぺたぺたぺたぺた。
執拗に右の膝上を一周ぐるりと触れて確かめられながら、でも我慢して歩く。フェイスベールがあってよかった、なんとも言えない感触に口がむずむずする。
「なんか、顔色が……」
「あはは……ちょっと日焼けしちゃっ、……いぁッ♡」
オクタの足が、何をどうしてそっちへ行ったのか、内腿の方から上へと登り始める。前二本の足で張り付いて、後ろ6本の足が重たい頭を持ち上げる感じ。
でも俺がせかせか歩いて絶え間なく歩いているせいで上りづらいのか、時々吸盤が剥がれて下へずり落ちてしまう。
でもチビオクタは根性があった。その根性が無ければきっとチビだから生きていけなかったに違いない。でも足に巻き付かれた俺にとっては、素直に諦めて欲しかった。
「えっと……んッ♡ バザールへ、はやくぅんん……いきましょッ♡」
「リンリンさん……?」
諦めの悪いオクタの足が、どんどん俺の股間に近づいてくる。
しかもさっき水をぶっかけたのが効いたのか、チビオクタは活き活きと体表面から粘液を出すようにもなっていた。とろりとした何かが内腿を伝い落ちていく。
「はっ……んッ♡」
前に出す足がぎこちなくなる。チビオクタはついに俺の右足の付け根まで到達し、事もあろうに反対側、左足の内股にも吸盤を張り付けた。チビオクタは自分の体を安定する場所を探し、結局、俺の股間にがっちりと吸い付く。
いや、オクタは安定したかもしれないけど、俺が非常に不安定なんだけど?!
「リンリンさん、やっぱり体調悪いんじゃ……耳の先まで真っ赤ッスよ」
「だっ♡ 大丈夫ですよぅんん……ッ♡♡ ほら元気元気! じゃ、じゃあ、あたし……とッ♡ バザールまで競争っ……やっ♡……ですよ!」
変なところで声が上ずりそうになるのを我慢する。股を閉じたいのにチビオクタが張り付いているせいで閉じることすらできない。淑女のパンツの中はオクタの粘液と俺の汗とが混ざり合って不快指数が非常に高くになっていた。
脱ぎたい。
出来ることならば、今すぐ全部脱ぎ去って走り出したい。
でもそんなことしたらオクタは置き去りだし、女装癖を暴露することになるし、せっかく気に入っている淑女の服を失くすことになる。だからなるべく早くカラカラバザールに到着して、この勘違い男とお別れしたくて走り出した。パウダさん見つけて用件を伝えて、すぐに帰ろう。
よーいどんも言わずに、俺は全速力でカラカラバザールに向かって走り出した。
「やッ♡ だめ♡ コリコリしないでぇッ……♡♡」
少し予感はしてたけど、走るたびに股間に張り付いているチビオクタの頭の上の石が、わずかに主張をし始めていた息子の側面を擦った。さらには柔らかい頭の部分も微妙にタユンタユンとぶつかってくる。
やばい、気持ちよくなってきちゃう。
「もう、やらッんん♡ でもここで、見捨てたらなんか後味悪いし、もーーー……んんッ♡♡」
「あら、リンク? 久しぶりね……」
「へあ?」
全部我慢してハアハア言いながら駆け込んだカラカラバザールで、探し人のパウダさんが俺の顔を見て指さしていた。どうして淑女の服を着ているのに分かったんだろうと思ったら、勢いよく走り過ぎたせいでフェイスベールがめくれている。
「げぇ! リンリンってお前、男かよ?!」
あとから追い付いたガラトンは、めちゃくちゃ嫌な顔をしてそのままカラカラバザールの奥の方へ去って行った。女装癖バレたけど、服とオクタは守ったからいいや。
それにお目当てのパウダさんにも会えたし。
ペタペタヌチュヌチュするのを我慢しながらエノキダの話をすると、彼女は少し考えたのち「そのイチカラ村とやらでヴォーイ・ハントかな……」と重たい腰を上げた。
「情報ありがとう」
「いや、こちらこっそ……んぅッ♡ 行ってもらえるとっ助かる、よ……ひぁ……♡」
「さっきから大丈夫? ちょっと顔が赤いわ」
「大丈夫大丈夫! 元気だよ! んんんッ♡」
フェイスベールで表情が読み取りづらいのも忘れて、わざとらしい満面の笑みで力こぶを作って見せた。するとパウダさんはクスリと笑ってから、じゃあと口を開いた。
「一旦、お家に大きな荷物を取りに行きたいの。手伝ってくれる?」
「え、俺? ゲルドの街には……」
「その恰好なら入れるでしょ? それともこれまで侵入してたのバラされたい、リンリン?」
返事を待たずに踵を返し、パウダさんはすたすたとゲルドの街の方へ歩ていく。心なしか真っ赤なポニーテールが嬉しそうに跳ねていた。
でも俺としては真っ青だ。
ようやく股間に張り付いたチビオクタを淑女のパンツの中から出せるかと思ったのに、このままゲルドの街へ着いて来いだなんて。弱り目に祟り目、本当に踏んだり蹴ったり。
「ちょ、ちょっとぉ……ッ♡」
「その語尾を伸ばす感じ、たぶん最近の男性ウケは微妙よ」
違うよわざとじゃないんだよ。でも股間にオクタが張り付いているんだよとも言えず。
渋々、俺はパウダさんの隣を、なるべく静かに歩き出した。コリッコリッと一歩踏み出すごとにチビオクタの頭の石が股間を擦る。さらには何を思ったのか、あのすぼんだ口が内ももに吸い付いた。
「ふっ♡……んん…………ぅ♡」
でも我慢、我慢するしかないじゃない。
すでにシーカーパンツの中で俺のナニは随分と強張りを強くしていて、先っぽからどろどろに濡れ始めていた。いくらゆとりのある服装だと言っても、これ以上主張されるとまずいことになる。
それどころか、このまま刺激をされ続けたら、俺一体どうなっちゃうんだろう。気持ちを落ち着けようと、長く細く息を吐く。
「リンク、もしかして本当に体調が悪いの?」
「うぅ………や♡ だいじょ、はっ♡……ぁ♡♡」
「大丈夫そうじゃないわね。分かった、ママに事情を話して少し家で休んでいけるようにするわ。いい情報教えてくれた人だし、ママだって病人を無下に扱ったりはしないもの!」
言うや否や、パウダさんは俺を横抱きに抱え上げる。
瞬間、石がゴリゴリ前を当て擦り、プルプルの頭の部分が袋の裏に当たった。
「ひゃんっ♡♡」
「ほら、こんなに体が熱持ってる。熱中症かもしれないからちゃんと休まないと駄目よ」
「だ、だめなっ……ふわぁッ♡」
ビクッと反り返りそうになる体を根性で強ばらせ、俺はひたすら耐えた。パウダさん、さすがガタイのいいゲルド族だけあって、ちっこいとはいえヴォーイの俺を抱っこして運ぶのぐらいなんのその。ちょっとだけ悲しかった。
街の入り口でも「病人よ」と一言伝えただけで、厳しく検めれることもなく中へ入れてもらえてしまう。ルージュには悪いけど、やっぱり街の警備がザルなのはどうかと思うよ。もう少し警備強化した方がいいと思う。
でもそんなことより、こんなハアハアした状態でパウダさんのお母さんに会ったら絶対にバレる。だって娘が居るってことはつまり、ヴォーイのこの状態知ってるってことだから。
「パウダさんッ、だいじょ……んはっ♡………えっと、おれ、じゃなくてっ、あたし……ッ♡♡」
「無理しないで」
「はぅっ♡ ごめ、んとね、知り合いがいる……ふっ、んんっ♡♡……から、だいじょう、ぶ♡」
「どこに? どこに知り合いがいるの?」
「あっちぃ……」
適当な方向を指し示すと、見事にパウダさんは一瞬だけ気を取られた。そこは何もない、ただの壁。
でもそれが狙い。
よくよく考えたら俺にはシーカーストーンがある。一瞬で遠くに逃げればいいのだ。むしろ行先には知り合いがいない方がいい。
そこで思う存分淑女の服を開いて、中からぐちゅぐちゅになったオクタを取り出せばいい。
「行き止まりよ?」
「ごめっん♡♡ 埋め合わせはっ…すりゅ!」
涙目になって、適当にシーカーストーンの画面叩いた。震える指が端っこに当たったが、ちゃんと俺はワープした。よかった助かる……!
と思ったのもつかの間、飛ばされた先でハッと息を飲んだ。
『いらっしゃいまし、ミジャーからお話は聞きましたわ! あなたが何やらとっても可愛らしいお洋服を着ていらっしゃるって!』
「だいようせいぃぃ……♡」
『ぜひともアタクシにそのお洋服を見せてくださる?』
「ひゃえっ……♡♡」
小さい妖精たちがぐるぐる回りを回り始め、あの優雅なのにぶっとい指が俺の体をグイッと持ち上げた。どうしてこう、人がいる場所にしか行けないんだ俺は。
「ちょっと、そのぉ……ッ♡」
『ちゃんと立ってくださる? 見えませんわ』
立ち上がろうとのろのろと、体を動かす。見せれば満足するなら、見せた瞬間砂漠に飛び出して全裸になりたい。
砕けた腰に無理言わせて立ち上がろうとした瞬間、オクタの足がついにシーカーパンツと太ももの隙間に入りこんだ。
「~~~~~ッ♡♡ ♡」
オクタがものすごい慌てた様子で奥へ奥へと入り込んでくる。なんで?!と思ったのだが、どうやら大妖精から溢れる神気のようなものが怖いらしい。可愛いけれどやっぱりオクタは魔物だった。
でもそんなことに感心している場合じゃなかった。ずんずんパンツの中まで入って絡みついてくる足が、ついには俺のナニに直接絡みつく。
「だ、だっ……それはァ♡ ら、らめぇ♡♡」
立ち上がりかけたが前かがみになり、膝がくずれて頭が砂の中につっぷした。
はっはっと荒い息を吐き出すと妖精たちが不思議そうに、あるいは心配そうに周りを飛び始めた。でもそれすらうっとおしいぐらいに、オクタの足が絡みつく。
もっと奥へ、もっと深いところへ逃げ込みたいのか、ずるずるに伸ばした足の先が充血した先端をかすめる。
「やっ……そこっ♡」
『どうしたんですの……?』
「ちが、だ……、ふあっ♡」
フェイスベールは溢れた唾液ぐっしょりと濡れて意味をなさなくなり、砂にまで滴れて模様を描く。しかし仮にもハイラルでは光の側に立つであろう大妖精の前で、パンツの中からオクタを引きずり出すわけにもいかず。どうしたらいいのかもう分からないけれど、とにかくチュコチュコと絡みつくオクタから逃げたくて体をよじる。
出会った最初の頃のソフトタッチは影も形もなく、チビオクタは必死に逃げたいばかりにシーカーパンツの中をまさぐった。本気で大妖精が怖いのか心なしか震えていて、程よい振動が腰を揺らす。
「ぷるぷるはッ♡ らめぇ、なのっ………♡」
羞恥を捨てて淑女のパンツの中に両手を突っ込んだ。チビオクタ、可哀そうだけど出てくれ。
ところがオクタをはがそうとした途端、痛いぐらいに吸盤に力を込めてこともあろうにオクタは俺の竿に巻き付いた。
「いっちゃ、うんん……♡ ひゃぁッ♡♡」
パンツの外に出されるまいと竿に絡み、玉袋までぐりぐりと持ち上げ、ついには鈴口の先端に開いた穴に潜り込めないかと足の先が探りを入れに来る。でもそこからは絶えず俺が先走りを流していたので諦めたのか、足五本ぐらい使って硬くなった竿にがっつりと巻き付いた。とれやしない。
たぶん杭かなんかだと思われたんだと思うが、ようしゃなく締め上げられて俺はさらに太くさせてしまう。巻き付いた柱(柱じゃないんだよ本当は)を中心に、他に逃げ場を探すように残りの足が後ろの方へと伸びて行った。
で、ついに見つけてしまったのが、後ろの穴。
固く閉じておいたはずの肛門回りでしばらく困っていたオクタの足は、ぬめり気を増すとともに柔らかく撫でて入れる隙間を探す。
「あっ……ぃやっ♡ …そっこ、は、はいれなっ……♡」
『一体全体どうなさったのです?』
たぶん大妖精には性別なんかないと思う。だからハイリア人の営みなんか知らない。知らないって怖い。
ただオロオロして、あげく何の気まぐれか、ふぅ~っと息を掛けてくる。やめて、どうしてそういう余計なことするの。小さい妖精たちも俺の周りをぱたぱた飛んで、時々軽い羽が体をかすめていく。無駄に温かな感触がスッスッと不定期に軽く触れては逃げていく。
張り詰めた竿がいよいよ限界に近くなり、腰ががくがく震えてオクタをはがすこともままならない。引き剥がそうとすれば余計に引っ付いてくる。
「ちょ、まっ………むりぃぇ……♡♡」
ついには、必死で力を込めていたお尻の穴をこじ開けられて、オクタの足がそろりとお腹の中に入ってくる。そこは出る場所でしょ?!と思いながらも、吸盤が体の内側に絡みつく感覚に腰が跳ねた。
「あっあっ♡ ぁあんッ…♡」
先端が入ってしまうと、オクタは隠れる場所だと確信を持ったのか、他の足も一緒になって奥へ奥へと逃げ込もうとした。身をよじって逃げようとしても、体に上手く力が入らない。這って逃げようにも足も腕もただ砂を掻くばかり。
時機に奥へ進んだオクタの足が、奥のある場所に触れた。
「うっああぁっ♡♡」
これまでにない刺激に視界に星が散る。
なにやらコリコリしたものを見つけたのをスイッチか何かを勘違いしたのか、オクタは執拗に中にある部分を撫で繰り回した。でもそのたびに腰から頭の先までびりびりと痺れるような快感が突き抜けていく。
口を開けたけれど空気が足らない、代わりに変な声がのどと鼻から逃げていく。
「あっあっ♡♡ そこはっ、らめッ♡ もう、やら♡ ゆるしてぇ♡♡」
『アナタ、本当にだいじょうぶですこと……?』
また心配そうにふぅ~っと優しい吐息を掛けてくれた。やめて大妖精。
オクタは俺のお尻の奥の方にあるコリコリしたところに吸盤を引っ付けてさらに奥へと潜り込もうと足に力を込める。正確には分からないけど、たぶん三本ぐらいお尻に入ってる気がする。
じゅるじゅると出し入れされて、俺の欲望はもはや弾けるのを待つのみ。オクタを引き剥がす手が諦めて、反り返った肉棒に指が掛かる。どうして大妖精の前でこんなぁー!と思った瞬間、オクタの足が俺の指を弾いた。まるで蜘蛛の糸に縋る他の人を振り払うかのようなオクタ。
ごめん、そこにある棒はお前を助けてくれる蜘蛛の糸でもないし、むしろ俺の物だから返して。
そのまま勢いをつけてくるくるっと竿に巻き付いて、なお一層きゅっと締め付けた。
「うぅっあぁぁッ……♡♡ ♡」
ビュルルと勢いよく先端が弾けた。その場にいた誰からでも見えるぐらい、白い粘液が放物線を描いて飛んでいく。
でも白濁した液が掛かった瞬間、オクタは「ぴゃっ」と叫び声を上げて俺から離れて逃げて行った。
「うひぁっ♡♡」
一気にお尻からも足が引っこ抜かれ、反動で二度目の快感が襲ってくる。何も出ないのに背筋をびくびく痙攣させた。
オクタはちょっと離れたところまで逃げ、じーっと俺の飛ばした残滓を見ている。それからツンツンと一つ足で触れてみてやっぱり「うえー」ってジト目になった。たぶん苦くて臭かったんだと思う。自分から出たアレが、そういうのなのは分かってるけど。
「ひどいぃ……」
あんなに守ってあげたのに、オクタ酷い。くったりと頭を砂の中に埋める。
大妖精だけが不思議な顔をして首を傾げていた。
『ごめんあそばせ、少しアナタの思っていることを読み取らせていただきますわね……』
最初に会った時みたいにスッと真顔になった大妖精の長女テーラは何呼吸かののち『゛まッ!』と声を上げて口を抑えた。
人の思っていることが読めるって、本当だったんだ……。
『ハイリア人の男性が女装をすると、こういったお考えをお持ちになるのね。大発見ですわ……これは何としても、他の姉妹たちにも教えねばなりませんわ……』
「や、やめて……」
それからしばらく、俺は大妖精のところに顔を出すことが出来なかった。だがハイラル城へ乗り込むにあたって、ずっと行かずに渋っていたのは装備を強化してもらいたかったがため。全部の材料がそろってしまったら、もう尋ねない理由は無い。
渋々、カカリコ村の裏手の泉へクチューラを訪ねることにした。四女だし、遠い場所にあるし、話が伝わって無ければいいなーと、これはたぶん希望的観測でしかないのは分かっていた。
俺の姿を見るや否や、クチューラは『お姉さま方!』とどこかへ向かって叫ぶ。するとあろうことか、あの小さな泉に四姉妹が勢ぞろいした。めちゃくちゃキツそうだった。
そしてゲホゲホむせる長女テーラが口火を切る。
『女装用の服でしたら、生きたオクタを使えばさらに気持ちよく改造して差し上げますわよ』
「……結構です」
大妖精姉妹は一様に眉根をひそめ、『なぜっ?!』と声を揃えた。
了