ゲームオーバー - 1/3

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「また?!」とプルアさんの声が裏返り、「はい、またです」と俺が項垂れる。

「あのねぇ、姫様はあんたと違って体力お化けじゃないんだから、もうちょっと手加減ってものをネェ」

 ゼルダが熱を出した。ごめんなさい、俺のせいです。

 俺が我慢できなくて、なんやかんやで連日何回戦かやってしまって、また体調を崩させてしまった。なんやかんやです。

 なんやかんやの詳細はここでは省きます。

 でもそのなんやかんやが数度目ともなると、こっそりシーカーストーンで家まで来てもらったプルアさんの顔も俄然怖くなる。

「ちょっといい加減にしないと駄目だワ、このバカ。このあと少し研究所に来て」

「はい……」

 言いつけ通り、ゼルダが少し落ち着いて寝入ったのを確認して、研究所へ向かった。

 と言ってもだ、言い訳ぐらいさせて欲しい。

 手加減しろという方が難しくはないだろうかと、俺などは思うわけだ。だってあんなにかわいいのに、どうやったら手加減できるのか逆に教えて欲しい。むしろこっちが手加減してほしいぐらい、正直ゼルダはかわいいの暴力だ。あんなかわいいで殴られたら正気でいる方が難しいとは考えないのだろうか。

 なのにゼルダときたら、切れ切れにあえぐ吐息の合間に俺のことを何度も呼ぶ。そんなの我慢しろっていう方が無理に決まってるだろ。こちとら拗らせ歴百年だぞ。

 それに額面通りの年齢ならば後期高齢者かもしれないが、大半は寝ていたんだから心身ともに健全な十八歳。自他ともに認める健康優良児の俺にどうしろっていうんだっ!

 なんて、中身だけは本物の後期高齢者であるプルアさんには言うこともできず。

「正座」

「……ハイ」

 俺は研究所について早々、ランドセル背負った海千山千の幼女に怒られた。途中でとばっちりを受けて逃げ出していくシモンさん。ごめんなさい、大体は俺が悪いけど不可抗力と思ってください。

「確かに年相応なことだから分からんでもない。が、頻度がサル並みなのはどうにかしなきゃいけないワ」

「ハイ……」

「ということで本を貸し出すから自分でどうにかしなさい」

 と、丁重にカバーのかかった本を渡される。

 なに、これ。ねぇプルアさん、何ですかコレは。

「シモンのお宝。貸し出すから、あとは自分でガンバ」

 中身を確認しようとしたら「そんな汚らわしいものをここで開くな!」と怒られてしまった。家に帰ってからこっそり読めと言うことらしいのだが、むしろそんないかがわしいものを押し付けるなと言いたい。まかり間違ってゼルダにばれて、俺を見る目がさげすむような目つきになったらどう責任取ってくれるんですか。

 でもギラギラ睨んでくるプルアさんに逆らうこともできず、結局、腹とズボンの間に挟み込んで上からシャツで隠した。おそらく一人で抜けってことなんだろう。

 シモンさんの趣味は女医モノだとか、風の噂でうっすら聞いている。趣味がゼルダの俺とはあんまり趣味があいそうにないんだが、でもしょうがない。背に腹は代えられぬ。むしろどこかで俺も自分の趣味の物を調達しなきゃいけないのかもしれない。ゼルダ姫の薄い本ってどこで売ってるの? ゲルドの街でイベントやる? ともかく調達したら返すことにしよう。

 あー憂鬱だなぁとため息を吐きながらの帰宅後、夜にこっそり本を開いて絶句する。

 一人じゃできないことが書いてある本だった。