〇月〇日
頭の傷は何とか隠せる程度だった。よかった。でもインパにはとても怒られてしまった。それもまた彼女の優しさだと思うが、ただただ誰に対しても申し訳なかった。
でも何よりも問題なのは、私の力が全く目覚めないことだ。
私に怪我をさせて以来、リンクが暴れることはとても少なくなった。もちろん私以外の人の気配にはとても敏感で唸り声を上げるが、それ以上に動くことは無くなった。どうやら私に怪我をさせたことを悔いているようで、わずかにでも人の心が残っているのが透けて見えて少しだけ安心する。
でも代わりに、リンクは痛いと言うことを鳴いて訴えるようになった。言葉ではなく、切なそうに鼻を鳴らし、小さく悲鳴を上げて身をよじる。もうとうの昔に騎士としての矜持など忘れてしまった彼は、今は言葉なく鳴くか鎖を鳴らすことしかできない。
でも私が涙を流すとゆっくりと傍にきて、涙を舐めてくれようとする。もちろん口輪のせいで届かないのだけれど、一生懸命に慰めてくれようとする。貴方をそんな風にしてしまったのは私なのに。
私に封印の力さえあれば、彼を癒してあげることもできるかもしれないと言われた。でも力が訪う気配はない。
何もできない自分が憎い。無才の己が許せない。