狂犬ちゃん - 4/25

〇月〇日

 色々と試してみたがリンクの世話ができるのは私一人だけのようだ。

 どんなに大人しい侍女や、親しかった騎士、はてはインパにまで、彼は猛然と牙をむいて大きく唸り声を上げる。世話どころか、近寄ることさえできなかった。

 しかも悪いことに、鎖も口輪も食い込んでそこから傷が出来ていた。昼間起きているときはせわしなく動き回っているので、仕方なく夜中に膝に頭を乗せて髪を梳いた後、朧気に寝たところで傷の手当てをする。でも起きたらまた誰を襲ったりしないとも限らないので戒めを元に戻すしかなくて、塞がりかけた傷から血がにじむ。これでは治らない。

 必死で手当てをして夜更けに部屋に戻ったら、インパが酷い顔で私を待っていた。曰く、もっと早くに戻って体を休めて欲しいと。そうでなければインパ自身も心配で寝られないと。

 彼女の言葉が方便であるのはすぐに分かった。彼女はとても優しいから、私の身を案じてくれている。

 でも私には、リンクがあんな風になってしまった責任がある。善処しますとインパには言ったが、リンクと共に居る時間をこれ以上短くすることは考えられなかった。

 ごめんなさいインパ、これは私の業です。誰でもなく、私が背負うものです。ごめんなさい。