〇月〇日
今日も熱が高かった。水差しから水を飲むことも出来ず、仕方がなく口輪を外す。
仰向けに寝かせて口移しで水を与えた。水だけでいい、頼むから飲み込んでほしい。祖も思いだけだった。
ところが口に水を含ませたその刹那、リンクの青い眼が澄んだ。
本当にたった一瞬のことで、我が目を疑う。
人の言葉を失い、もはや獣としてしか生きられない状況に陥ってから数か月あまり。初めて人間の顔に戻った瞬間だった。
ただ、恐る恐る名を呼んでみたが、光はすぐに消えてしまった。すっと瞼を閉じ、聞こえてきたのは穏やかな寝息。久しぶりに彼は穏やかな夢を見ているようだった。
ただ次の日には少し体力が戻ったのか、また暴れるようになってしまった。
でも口移しをすることで、人に戻る何かきっかけがあるように見えた。折を見てまた試したいが、元気になってしまうと口移しなどできるはずもない。
どうしたらよいものか。