狂犬ちゃん - 12/25

〇月〇日

 リンクが暴れた当初、言うことを聞かせられるのが私だけというので、実はここのところ修行は頻度を抑えられていた。仮にも彼は退魔の騎士なので、厄災を討ち果たすためには正気に戻ってもらわなければという目論見があったらしい。

 しかし私がいくら世話をしても一向に良くならないため、業を煮やした者たちが私に修行を再開するように迫った。しかも彼の世話に明け暮れていた分を取り戻すため、今までの倍の時間を修行に費やすようにとのこと。

 酷い言いがかりだとは思った。でも力が目覚めないことはもちろん、リンクの世話をしていても一向に正気に戻る気配がないのは事実だったので、従わざるを得なかった。

 おかげで十日ほど、インパに彼の世話を頼むことになってしまった。インパはこの件に関して唯一信頼できる。だから預けた。

 でもやはりインパでも彼に近寄ることはできず、満足な世話ができなかったため、十日ぶりに会いに行った彼はまた熱でぐったりとしていた。早く傷の手当てをしなければ、命にかかわる。

 しかしミファーの言葉が脳裏によぎる。

  本当にリンクは生きたいと思っているのだろうか。もう終わりにして欲しいと願っているのではないか。抱き起そうとする手が止まる。

 でも触れた体はまだ温かくて、どうしようもなく心臓は動いていた。動いているものを見捨てることなどできない。私はミファーにはなれない。

 エゴだと言われてもいい。死んで欲しくない、ただそれだけ。