「おはよう……?」
低く、落ち着いた声に起こされた。
それだけで、戻ったのだと分かった。
「おかえりなさい、リンク」
「……ただいま、か」
言って、彼はふわぁと大あくびをした。それからいつも通り、遠慮のかけらもなく私の胸に顔をうずめてくる。
しかし意外にも、ただそれだけだった。
たとえ百年前の自分と言えども、他の男は絶対に許さないと思っていた。何なら朝一番に上書きでもしそうだと思っていただけに、まだ眠そうに大人しく私の腕のなかでまどろんでいるのがいっそ不気味なほどだ。
「嫉妬の一つでもするかと思ったのですが」
「しているには、しているけれど……」
その割に大人しいですね言いかけて、彼の口元がむずがゆそうに歪んでいるのが見えた。これはまた、何か企んでいる様子。
「ゼルダはずっと気づいていなかったようなので」
「何の話?」
「さぁ、何の話でしょう」
分からなくて首をかしげる。
でも言われてみれば果たして彼は、いったいいつの彼と入れ替わっていたのだろうか。聞いておくのをすっかり忘れていた。