四方良しの円満生活

 夜警の者に引き継ぎをし、強ばった体を伸ばす。関節がぱきぽきと音を立てた。

 

「ってて……」

「お、英傑殿も肩凝りですか」

「不甲斐ないことに運動不足です」

 

 相応ですよと笑われたが、俺には結構な問題だった。

 厄災を封じて平和になって以来、格段に運動量が減った。一日立ちっぱなしのことも多く、最近初めて肩凝りを知った。

 体を動かせば楽になるが、鍛錬に付き合ってくれるのはダルケルかリーバルぐらい。ハイリア兵は俺の顔を見ただけで逃げてしまう。厄災を倒せてよかったとは思うものの、運動する機会が欲しいなぁと最近はそればかり。

 

「リンク!」

 

 訓練所を開けてもらおうかと考えていた時、聞き慣れた声があった。インパが廊下の向こうから駆けてくる。

 

「少し手伝ってもらってもいいですか」

 

 もちろんだと頷く。また今夜も遅くまで仕事なのだろう。大して年も離れてないのに大変な人だと思いながら、彼女の腕の中の大荷物に手を伸ばした。

 

「持つよ」

「よいのですか?」

「これぐらいどうってことない」

 

 丸い目をさらに目を丸くして、インパは腕の中の重荷を俺に預けた。

 以前は顔を上げないと見えなかった横顔が、今やほとんど横並びになる。意気揚々と歩く彼女は、アッカレの湾岸工事の進捗や、どこぞの貴族が横暴だとか、まるで立て板に水だ。

 一方の俺に出来るのは話を聞くことぐらいで、ウンウンと相槌を打ち続ける。口下手なこともあるが、女性は話を聞いてあげるのが良いと、実は宮廷詩人殿に教えてもらっていた。

 

「インパは頑張ってて偉い」

「まだまだ精進せねばっ」

 

 なんて言った耳の先、ほんのり赤くしながらインパは嬉しそうだった。

 インパだけでなく姫様やミファーからも、何か言われたら俺はひたすら聞き手に徹した。

 話を聞いて「大変ですね、大丈夫ですか」と声をかける。それから荷物を持ってあげたり、見晴らしの良い場所へ連れて行ったり、お菓子を渡したり。すると彼女たちは「ありがとう」と穏やかになるので、やはり宮廷詩人殿の言は間違いないようだ。

 お疲れの姫様方をこんな簡単なことで労えるのならば願ったり叶ったり。俺みたいな気の利かないやつは、怒らせないだけマシというものだ。

 

「で、インパ、何の手伝い?」

 

 ずっと話を聞きながらインパに付いてきたが、上等な赤絨毯に靴が食い込んだので城のかなり奥まで来たことに気付いた。

 現在のハイラル王家はお二人なので使われない部屋が多い。だが元来、王族は大所帯になりがちだ。お子様やご側室の部屋がいくつあっても足りない王様も昔はいたらしい。

 姫様の部屋からは遠く、灯りが間遠な廊下は、今は使われていない部屋の並びのどこかだろう。宮仕えして間もない俺にはよく分からなかった。

 

「この部屋です」

 

 インパが押さえる扉をすり抜けて中へと入る。重たい扉の奥にはもう一枚内扉があって、二重になった部屋に入る。

 背後でガチャっと鍵のかかる音がした。

 

「インパ?」

 

 振り向く。

 いない。……いない?!

 息を飲んだ瞬間、後頭部のあたりで「御覚悟」と声がした。戦場で幾度となく背後を守ってくれた声が、俺の真後ろを取る。

 大量の荷物を持っていたことも、インパだから安心していたことも言い訳にならない。

 平和ボケした体は反応が遅れ、振り返ることすらままならない俺の口元に布を当てられた。ツンと鼻に抜ける嫌な匂いがして、ぐわりと脳が揺れる。薬だと気付いた時にはもう遅く、視界が歪んで暗く閉じていった。一呼吸でここまで効き目があるとは、さすがシーカー族だ。

 でも、なぜインパが俺を襲ったのか。それよりもこの事態を姫様に伝えねば。あぁ、ダメだ。瞼が重たい。

 そこで思考がぶっつりと途切れた。

 次に意識が戻ったのは、手首に痛みを感じたからだった。とろんとした頭を持ち上げると、両腕がベッドの天蓋にロープをくくりつけてある。鉄線入りの絶対に切れないやつ。

 しかしそれ以上に驚いたのが、自分がパンツしか着ていなかったことだ。パンツ一丁でベッドの中央に、膝をついた格好で腕で吊るされていた。

 

「どういう、こと……?」

「目覚めましたか」

 

 薄暗いベッドの傍らにゼルダ姫とミファーの姿があった。気付けばインパも俺の背後に立っている。

 

「姫様? ミファー?」

 

 さらに混乱に拍車がかかる。

 インパが俺を捕える理由ですら分からないのに、なぜ姫様が? なぜミファーが?

 しかも随分と怖い顔をして腕組みで立っていらっしゃるのだが、怒られる理由が思い当たらなかった。

 

「あの、俺、何かやらかしましたか?」

「どうやら本当に理解していないようですね」

 

 思わずコッコ肌になる。それぐらい姫様の翠眼は冷え切っていた。姫様の隣でミファーも大きなため息を吐く。

 

「幼馴染の私が言うのもなんだけど、リンクってそういう人よ。期待するだけ無駄だから早く始めましょ」

「じゃあプルアから貰った薬入れますね」

「え、はぁッ? ちょっ、プルアさんの薬?!」

 

 まって、ちょっと待って。百歩譲って縛られるのはいいけど、プルアさんの薬はまずい。最悪生死に係わる。

 助けを求めて首を回した瞬間、前触れなくインパに唇を塞がれた。

 じゅっじゅっと音がするぐらい唇を吸われ、びっくり口が緩んだ隙間から彼女の舌が入り込んでくる。目を白黒させていたら口を無理やりこじ開けられ、口移しで流し込まれたのはとろりとした液体だった。

 

「んぐっ?!」

 

 妙に甘ったるい香りの水薬を口いっぱいに送り込まれ、慌てて吐き出そうにもインパの舌遣いに翻弄される。丁寧に歯列をなぞられ、驚いて固まる俺の舌に絡みつき、訳も分からないうちに謎の薬は喉の奥へ消えた。

 薬を飲み込んだお腹の中も、口から溢れたて垂れた喉元も、不思議とじんじん温かくなる。変な気持ちになってくる。

 

「……ンっぐん………インパ、なにを、して」

「隠密の美人局つつもたせの技が役立つ日が来るとは思いませんでした」

 

 ぺろりと口の周りを舐め取るインパは頬を紅潮させていた。なんでこんな真似を、しかもミファーと姫様の前でやるんだと頭の中がぐるぐるする。俺の認識が間違ってなければ、曲がりなりにもファーストキスって二人でするものでは。

 大混乱の俺をよそに、さらに混乱が加速する事態が起こる。

 姫様とミファーが脱ぎ始めた。なんで。

 いや、俺も脱がされていますけれども。

 

「姫様、ミファーも、服着て!」

「ゾーラは元々服あんまり着ないよ?」

「そういう意味じゃなくって!」

 

 言ってる傍からインパまで襟元を緩め始める。なんで三人とも脱ぐの、俺これでも一応男だよ?!

 せめてもの抵抗でぎゅっと目をつぶったが、逆に衣擦れの音が鼓膜を敏感に揺らした。三人の肌が露になるのを想像して動揺が隠せない。

 こんなところを誰かに見られたら、ヒノックス三兄弟とライネルの巣に終身刑になっても許される気がしない。どうしようどうしよう。

 だらだらと冷や汗をかいて目をつぶって下を向いていた顎に、ミファーのひんやりした指が掛かった。

 

「そんなに私たちのことを見るの嫌?」

「嫌とかそういうのじゃなくって!」

「でもリンクがみんなに優しいからいけないのよ?」

 

 どういう意味だと聞き返すより早く、ぐちゅっと股間に冷たいものが押し当てられた。冷気と濡れる感覚が背筋をぞわぁっと走り抜けて、つい瞼を持ち上げてしまう。

 

「ひぁっ♡」

「これはゾーラ族が使う特別なチュチュゼリーなの。ハイリア人も気持ちよくなるといいんだけど、どうかな?」

 

 金の目を輝かせたミファーが俺の腹に薄桃色のチュチュゼリーを塗り付けていた。ぬちゅぬちゅといやらしい音を立てながら、パンツの中心から円を描くように赤い手が俺を撫でる。

 こんなことをされたら、さすがに鈍い俺でも下半身に血が集まってくるのが分かるというものだ。

 

「ミファーやめ、て……」

「ねぇリンク、先月ゾーラの里に来た時、私の作った夜食を食べて何て言ったか覚えてる?」

 

 問われて思い出すのは先月、姫様がヴァ・ルッタの点検のためにゾーラの里へ行った際のことだ。夜中にお腹が空いてしまい、こっそり魚獲りに抜け出そうとしたところをミファーに見つかった。訳を話したら彼女は笑って、ポカポカマスとハイラル米で海鮮おにぎりを作ってくれた。

 すごくおいしくて思わず三個食べた。でもそれが何だと言うのだろう。

 

「ミファーのっ……料理美味しいっ、からぁ、んッ♡ 毎日食べら……れたら、いいなって…言ったァ………はンッ♡♡」

「ほら、これだもの」

 

 口を尖らせたミファーと交代して、次に俺の体に触れたのは姫様だった。一番危険なのは正直言うと姫様だ。磨き上げられたお肌には傷一つなく、おっぱいは控えめながらも良い形をしている。

 でも問題はそこじゃない。

 お尻から太もものむっちりとした曲線にゴクリと喉を鳴らす。今まで直に見ることが叶わなかったあのお尻が、今や繊細なレース下着一枚で俺の前にある。

 ゼリーに濡れた腹筋に触れて、おずおずと肌の上を指が這う。ミファーの手とは違う温かな指先に思わず腰が揺らいだ。その瞬間、邪念を見抜いた姫様の指先が、俺の笠が張った先端にカリっと爪を立てる。

 

「やっあぁ♡ ひめっ……♡ だめで、すっ!」

「いいえ、そのまま答えてください。先日私がドレスを新調した際に何と言ったか覚えていますか?」

 

 先ほどのミファーの質問といい、何のための問いなのか皆目見当がつかない。でもすでに固く主張している竿をカリカリと、まるで仔猫が爪を研ぐみたいに引っかかれて焦った。

 確か新調されたドレスは瞳の色に合わせたもので、すっごく綺麗だったやつだ。白状すると俺は、人が多いとドレスの色でしかご婦人の区別がつかない。だからあのドレスなら絶対に見つけられると思った。

 

「ッ…女神様みたいっ……に、お綺麗だからぁ…はっあっ♡ ……もう絶対に、見失いませんと、ンうっ♡ 答え、ましたっ」

「これだから朴念仁は! 悪い騎士にはこうです」

 

 正直者の俺がなんで悪い騎士なのか教えてください女神様。

 姫様は白い布を取り出して、俺の目元をぐるりと覆う。視界は真っ白に、振りほどくことも出来ず、自然と体が強ばった。そこへ再び姫様の手が伸びる。パンツの中で窮屈になる息子や袋の膨らみを、撫でたり爪でカリカリと弄ばれた。

 ごめんなさい、何がごめんなさいか分からないけど、ともかくごめんなさい。

 だって俺はしがない童貞でしかない。先輩騎士に娼館に誘われても怖くて、しく一人でやってきた。だからこんな風に責め立てられたら、理性が保てる度量も経験もない。

 そんな懺悔も虚しく、いきなりミファーの長い爪に乳首をピンと弾かれた。

 

「ぅあぁぁッ♡♡♡」

 

 普段いくらでも剣帯が擦れる場所なのに、腰が浮いて背を逸らす。ピリピリした衝撃を脳天へと逃がし、どうにか息を整えようとした。

 ところがミファーは逃さないとばかりに、小さな唇でカプっと俺の耳を食む。ちゅるちゅると卑猥な音を立てて、冷たい感触が耳殻を行ったり来たり。顔を背けようにも顎を掴まれて、耳にふうふうと息を掛けられると、もうたまらない。

 

「ハイリア人にもゼリーちゃんと効いてるみたい。姫様も塗り込んでおいた方がいいよ」

「ありがとうミファー。これのおかげで、初めての私たちでもちゃんとできて大助かりです」

 

 だから何の話!

 初めてって、そりゃもちろん姫様は初めてですよねっ。初めてじゃなかったらハイラル王が第二の厄災になること請け合いだ。俺と退魔の剣じゃ絶対に封じきれない。

 でも会話を素直に解釈すれば、ミファーと姫様は俺といわゆる同衾ってやつをしようとしている。俺の記憶が正しければ同衾は定員二名だった気がするが、いや待てもう一人いた。

 特大マシュマロが二つ、ぽよんと背中に押し付けられる。

「プルアの薬もよく効いています。私も少し飲みましたが、これなら十分いけます」

 耳元にインパの蕩けるような吐息を感じた。薬を飲まされた俺と同じかそれ以上に、彼女の体は熱い。

 兵士の間で『シーカー姉妹のおっぱいに触れたら生きて家に帰れる』と変な噂がたつぐらい、インパの胸が大きいことは知っていた。それが俺の背に押し付けられて、形を変えて上下する。

 インパの双子山の隘路にゼリーを垂らし込めば、生ぬるいそれはクチャクチャと音を立てて俺を追い立てた。断然お尻派だった俺だけど、思わずおっぱい派に乗り換えようか気持ちがグラつくほど衝撃的な柔らかさだ。

 もちろん性癖改宗を女神に祈る暇なく、後ろからはインパのおっぱいが、前は下半身を姫様に、上半身をミファーにいじられ続けている。一人で慰める時には聞いたことも無いような声がぼろぼろ溢れて、まるで自分じゃないみたいで頭を乱暴に振った。

 しかし冷静になる隙など与えまいと、今度はインパが耳元で呟いてくる。

 

「では私からも質問です。この前に一緒に王立古代研究所へ行った帰り道、私に何をしたか覚えてます?」

 

 覚えている。インパがフラフラだった時だ。

 研究所の管理者も兼ねているインパは、またなんかやらかしたプルアに念書を書かせて謹慎を言い渡し、加えて各所に謝罪行脚。もちろん全て他の仕事と並行していた。

 あまりの仕事量にインパは寝不足で、帰り道は馬に揺られるのも危ないほどフラついていた。その姿に思わず手を貸したのだ。

 

「ふっ、はぁッ♡ 疲れてる、な、ら…んっ♡ 俺の馬に乗って、…寝てって、いいよって……ぁんッんッ♡♡ 抱っこした、……だけじゃ、んッ♡♡」

 

 正直に答えた。ところが三人の気配がまるで剃刀のように鋭くなる。

 ミファーにぎゅっと乳首をつままれ、姫様にパンツの上から先端に爪を立てられ、インパには耳を噛まれた。

 

「ぅおあッ♡♡」

 

「今の言い方、聞いた?」とミファー。

「だけ! だけって!」とインパ。

「どこまでぼんやりなんでしょう!」と姫様は怒りながら、手をそっとずらす。指先がパンツの縁にかかるので狙いが分かった。

 

「だ、だめっ……ひめさっまッ、ぁんッ♡♡」

 

 姫様の手に迷いはなかった。

 一気に引き下ろされたパンツは、足から引き抜かれてどこかへ消える。痛いぐらい反り返った息子が涎を垂らしながら飛び出し、反動で自分の腹を擦った。そんなものを人前どころか、女性三人の前に晒すなんて。

 顔から火が出そうなんだけど、本当に俺の悪事って何?

 だって三人とも一緒にいるときはすごく嬉しそうだった。なのにどうして後から蒸し返されて怒られるんだ。怒られるだけならまだしも、痴態を演じさせられる理由が本気で分からない。

 でも羞恥に俯く理性に反して、急所と身体は嬉しそうにがっていた。

 

「いいですかリンク、貴方の言動は女性の心を弄ぶものです」

「ひぁんっ♡ もて、あそンッ……ちが、そんなぁあっ♡♡」

 

 柔らかい手の平と醜い剛直の間に隔てるものがなくなる。ゼリーと先走りとが滑り気を増し、ぐちゅぐちゅと泡立つ感触に腰が揺れた。

 

「そうよリンク。私も姫様もインパも、みんなあなたの言葉に一喜一憂してたんだから」

「リンクが優しくするのが自分だけじゃないと分かった時、首を絞めようかと思いましたよ!」

「そんなッことぉ…あっあっ♡ 言われ、れもっ……!」

 

 優しいことが悪いことだなんて、そんな馬鹿な。だって恋路に明るい宮廷詩人殿も、熊みたいでモテなかった父も、女性には優しくしなさいと異口同音だった。

 だが現状を考えると、何が正しいのか俄然分からなくなる。かといって脱がされる理由もまだいまいちピンと来ない。

 疑問符いっぱいの俺にはお構いないしに、インパはすっかり硬くなった蕾をこすりつけて来るし、ミファーは乳首がよほど気に入ったのかずっといじめていて、姫様に至っては会話の合間に先っぽを咥えて可愛い舌でなめなめし始めた。

 ごくっと何度目かの先走りを飲み込む音がして、また姫様の手がにぎにぎとモノの感触を確かめる。

 

「ですから、三人で相談したんです」

「何、をっ……んくっ♡」

「三人で仲良くリンクを分けようって」

 

 インパの心眼の小太刀で頭と胴体と脚の三部位に、ぶつ切りにされる様を思い浮かべてゾッとした。

 

「わけっ? おれ、さんぶんかちゅッ、ンッ♡ さ、れちゃッ……うの?」

「いいえ、同時に三人相手をしてもらいます」

「体力オバケの勇者なら、生娘三人ぐらい問題ないとウルボザ様のお墨付きです!」

「全員に気を持たせるようなことをするから悪いのよ、ちゃんと責任取ってね?」

 

 そんなこと言われたって俺は、男の先輩達に従っただけだ。

 女性というのは案外、話を聞いてもらうことが薬になるらしい。否定してはならないし、問題解決の提案するのも悪手、何か問われたら褒めておくに限る。それがあの宮廷詩人殿のありがたい教えだ。

 確かに父も、あるいは恐妻家のダルケルですら、自分の妻を前にすると鳩みたいに相槌を打つ。だからそれが女性の正攻法だと思っていた。

 

「そんなっ、やっぁあっ♡ …こと言われ、てもッ! 女の子の気持ちなんか、わかんぁッ…にゃい、もん♡♡」

「だったら女の子になってみたら分かるんじゃありません?」

「ひぁえぇ?」

 

 背後からインパのアッタカメロンが離れた。そしてカチャカチャと何かを装着する音がする。

 嫌な予感しかしない。女の子になるってどういう意味だか、ちょっと想像したくない。

 

「まずはリンク自身が、女の子の気持ちを知ることから始めます」

 

 姫様の宣言で無理矢理開かれた股の隙間に、ぬるりと硬いものが入ってきた。追加のゼリーでまだ冷たいそれは、股を前後に擦りながら形を俺に教えてくれる。

 息子と同じ形の、たぶん張り子だ。その先端が、お尻の穴にヒタリと照準を合わせた。

 

「ま、まっやっ……そこ、入れる場所、あんっ♡ じゃない、よぉォ♡♡」

「ウルボザからいただいたゲルドの正規品です。大丈夫ですよ」

 

 問題はそこじゃないです姫様。そういうのが趣味の男性がいるのは知っていたが、俺のお尻は物を入れる嗜好など無い。

 と、思っていたのは夢だったらしい。

 意外にも後ろの穴はすんなりと、明らかに大きな張り子をぬぷぬぷ飲み込んでいく。

 

「なん、…でッ? はい、るンッのっ……あァっ♡♡」

「そのためのプルアの薬です」

 

 またインパの暴力的なおっぱいで背中は大わらわになり、同時にお尻には異物が粘つく音を立てて出入りする。出入りできてしまうことに驚く。

 全く慣らしていないのに、程よい弾力の張り子に痛みは感じない。それどころか胎の内側は潤んで快楽の波を余さず拾う。言いようのない快感がお尻から脊髄を通り、口まで走ってくる。なんだこれ、気持ちいいけど思ってたのと違う!

 

「やっだッ……あっお尻はッ…らめっぉ♡」

「ちゃんと女の子の気持ちを理解するまで許しませんよ」

 

 いやだ、恥ずかしい。こんなところを三人に見られるなんて。

 たまらず天を向いて、走り疲れた犬みたいに空気を求めて口を開く。飲み込み切れない涎が喉を滴り落ちる僅かな感覚さえ、鋭敏になった肌が感じて身をよじる。すると間髪入れず、濡れた喉元をミファーの冷たい舌にチロチロと舐められた。

 相変わらず指の腹で胸のあたりをくるくるしたかと思えば、硬く主張する乳首を予告なく弾いたりつねったり。しかも左右どちらに触れて来るか分からない。

 

「リンク、辛い? でも私たちも辛かったんだよ? だってリンクは誰にだって尻尾を振って懐いちゃうんだもの」

「ぃあっ♡♡ ちがっ……み、ふぁー、ゆるしぁぁンッ♡♡」

「許してあげない。あなたが四歳の頃から期待させられてきたんだからね」

 

 耳と乳首をいっぺんに触れられ、空気を求めてだらしなく垂れていた舌をちゅうちゅうと吸われた。

 後ろからはインパに責められ、上はミファーにいじめられ、下は姫様に遊ばれる。流石に三人同時はどれだけ体力があっても分が悪い。爆ぜる寸前の頭で叫ぶ。

 

「やらッ♡ らめっ♡ イっちゃ、んアぁ、イちゃぅッよぉ♡♡」

「リンク、女の子の気持ち分かりました?」

「うんっ♡ ぅうんッ♡♡」

 

 必死で頷いたのに、猛りを揉みくちゃに楽しんでいた姫様の指に、竿の付け根をきゅっと抑えられた。玉袋がずしりと重たくなり、出せと騒いでいた奴らが暴発寸前で留め置かれる。

 声にならない嬌声を上げた。

 ただ快感だけが突き抜けて、でも解放できない火種を抱えこむ。抑えられてなければ確実にイっていた。女の子の気持ちいいは、すごく気持ちいい。

 

「小さい頃のリンクは女の子みたいで可愛かったな」

「…くッ、ぁ♡ イき、たッ……イかせぇてッっ♡♡」

 

 はくはくと酸素を求める口元にミファーのなだらかな胸が触れた。思わずその膨らみに食らいつく。これ以上女の子になっていたら頭がおかしくなってしまう。

 頼むから楽にして欲しいと、ミファーの胸をしゃぶりながら懇願した。

 

「みふぁっ♡ もう、だっ、出させぁッ♡♡」

「何を出すつもりなの?」

 

 くすぐったそうに笑うミファーの手がゆっくりと頭を撫でてくれた。優しい声に縋る。

 

「せい、し、ぁあッ…♡ もうッむりぃ♡ 出ちゃ、……うか、らぁッ♡♡」

「外に出していいって誰に言われたんですか?」

「そうですよリンク、子種はどこに出すものだと習いましたか?」

 

 インパと姫様に聞かれて一瞬分からなくなる。一人の時とは違う、と言うより今は三人もいる。

 出したい出したい、でも誰に出したらいいか分からない。

 爆発寸前の屹立を姫様に付け根で抑えられ、それでも腰をへこへこと前後に振って、まともに物を考えられる状態じゃなかった。

 

「入れっ……させてぇ…あっあっもう、おねがぃ、おなか……に、出させっ、ぅくっ♡ …てくださ、ぃぃ♡♡」

「ちゃんとおねだりできたねリンク」

「では姫様、まずはどうぞ」

 

 まずは? よぎった不安は一瞬だけ。

 付け根を抑える手が姫様からミファーに替わり、痛いほど張り詰めた肉棒の角度を調整させられる。時々掠るミファーの爪だけでも危ないのに、付け根から揺さぶられて弾けそうになるのを、奥歯を噛んで我慢した。

 でも我慢の甲斐あって、今までの比じゃない気持ちよい空間が向こうから来る。

 

「ぅうがっ、あっあっ、ぁッ♡♡♡」

 

 目隠しが無くても視野が真っ白になる。姫様の後ろからぬかるむ蜜襞をかき分けて、俺の剣は祠に潜った。姫様の泉は薬のおかげで難なく俺を飲み込んでしまう。

 太ももまでトロトロの蜜が滴って、俺の脚も姫様の欲情で粘ついた。本当はお尻を揉みしだきながら腰を打ち付けたい。でも腕は上に縛り上げられたまま、我慢できずに腰を振った。

 

「すぐに果てるかと思いましたが耐えましたね」

「はっ♡ あァっ♡ ねぇ…ッ目ぇ……はず、してっ♡」

「もう、リンクはわがままさんね」

 

 呆れ声のミファーにゆっくり目隠しを外され、目の前の光景に喉からかすれ声が出た。

 四つん這いになった姫様の白いお尻が俺のイチモツを咥えこんで、お餅みたいにふるふると震えている。間近くにはミファーの金の瞳が、背後から俺の体にしなだれかかるインパの吐息が耳にかかる。ゴリッと奥を突かれ、たっぷりの唾液で口の中を蹂躙される。

 ここが地獄でも構わない。

 姫様は、浅いところを擦れば悲鳴を上げ、腰を回して中をかき混ぜるとお尻だけ上げて突っ伏して甘い声で鳴く。でも俺も後ろをかき混ぜられて、姫様と同じぐらいよじれた声をあげる。

 

「もぉ♡ …むりッ……止まんなぁ、ッ♡♡」

「リンク、奥っ、あんっ! もう私も、だめなのっ♡ お薬がぁ、あっやっ♡ 効きすぎて……!」

 

 いつの間にか姫様の声にも余裕がなくなり、喜んで奥を訪ねて叩くと蠢動する肉襞が俺を締め付ける。本当はもっと可愛いところが見たいけど、息つく間もなく絡むミファーの舌と後ろから追撃してくるインパの熱いおっぱいが許してくれなかった。

 

「リンク、イっていいですよッ」

「リンク、イくところ見ててあげるね?」

「リンク、だめっ、いちゃ、もうっわたしも……ッ」

「アッぁ、ぃやだ、んんっ♡ おれ、もうッでちゃっ、ぅンんッ♡♡♡」

 

 姫様のお尻に恥骨を押し付けて、最奥でパチッと火花が散った。うめき声を上げて何度も痙攣しながら精を吐き出す。

 それがどういう意味かなんて、この際どうでもよかった。

 ただ姫様の中が天国で、インパに後ろから女の子にされたのが気持ちよくて、ミファーに見守られながらイってしまったのが恥ずかしい。全部ひっくるめた快感に呆然自失となる。

 息も絶え絶えに姫様から自分を引き抜くと同時に、インパが吊るしていた縄を解いてくれた。その拍子にお尻から張り子がズルんと抜かれ、また大きく体が震える。

 

「うっあぁッ♡」

 

 ベッドに倒れてそのまま寝たかった。ところがミファーが俺を引き起こし、股間を覗き込んでうっそりと微笑む。

 

「リンクの勇者はまだまだ元気ね」

「当然ですよ、全部で三人なんですから」

「インパ、交代です。仲良く三人でがんばりましょうね!」

「え、ええぇ………」

 

 無駄に元気な愚息が憎い。

 結局そのあと二連戦、今度はインパとミファーが可愛かった。全員にイくところを間近に見られ、姫様に至っては達する瞬間をシーカーストーンに収められてしまう。曰く「プルアに動画機能も付けてもらいました」だとか。なんてこった。

 全部終わって、動画をちらつかされたら何も反論できない。

 三人は服を着直してベッドの縁に腰かけ、俺は全裸で正座させられる。俺のパンツは姫様の手の中だった。

 

「さてリンク。女の子の気持ち分かりました?」

「はい……」

 

 正直言うと気持ちいい以外はよく分からなかった。でも無駄口を叩くなと本能が警告する。今こそ宮廷詩人殿の言う通り、逆らわずに肯定だけをする時だと、それだけは分かった。

 でも次の質問を半ば予想出来るのが恐ろしい。

 同じくこれも宮廷詩人殿に聞いた話だが、女の子は「コレとアレ、どっちがいい?」って質問が好きらしい。だからたぶん次の質問は「三人のうち誰が好き?」だ。

 しかしこの場合はどの選択肢も不正解に近い。誰を選んだって残り二人が爆発するし、仮に誰も選ばないと全員爆発する。もはや勝ち目のないデスゲーム。

 諦めて悄然と正座していると予想通り、姫様はミファーとインパの手を取った。

 

「ミファーはゾーラ族の姫君で、インパはシーカー族の次期族長、私はもちろんハイラル王家唯一の王位継承者です」

 

 重々承知しております。だが口を挟む資格も度胸もなく、身を固くして沙汰を待った。

 

「と言うことでリンク、責任をとって私たち三人を娶りなさい」

「………………え」

「シドを後継者にするようお父様に手紙を送ったから大丈夫よ、これで跡継ぎ問題も片付くわ」

「我が一族としても勇者の血は興味深いと、プルアも了解済みです」

「類まれな身体能力を誇る貴方の遺伝子を独り占めするなんてもったいない。このあと四人で御父様の元へ向かいますよ」

 

 この御三方は何言ってるんだろう。ぽかーんと口を開け、間の抜けた頭をぐりっとひねる。

 ところが不思議なことに、あれほど凝っていた肩が滑らかに動いた。心なしか腰も軽く、どの関節も鳴ることはない。

 何と見事に一晩で運動不足が解消していた。

 

「よいですね、リンク」

「いいよね、リンク」

「いいと言ってください、リンク」

 

 前のめりになる三人の顔を見て、三者三様に可愛らしかったのを反芻する。同時にこれぐらいしないと俺の運動不足は解消できないと理解した。

 

「はい♡」

 

 この事件からほどなくして、プルアさんに見守られながら、右半身と左半身を仲良く一回ずつハイラル王とドレファン王に半殺しにされるのだが、この時の俺はまだ知らない。パンツを振って姉妹のように喜ぶ彼女たちを横目に、早く返して欲しいなーと呑気なことを考えていた。

 

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